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尺八の録音 ~編集、そしてCDへ~

 尺八を少し吹けるようになってくると、次に「自分の音を客観的に聴いてみたい」や「上手い人の演奏を録音して参考にしたい」という欲求が生まれてこないだろうか?しかし、「どうすれば録音できるのかわからない。難しそう」そんな気持でなかなか手が出せずじまい。そういった方の助けとなるべく、簡単でしかも強力な録音方法を紹介していきたいと思う。」

第2.5回:録音方法②

尺八の録音方法。Zoom H4での録音方法の参考写真01 尺八修理工房幻海

 今回は、前回の録音方法からの続きで、録音レベルの話や実践について語ります。

【録音レベル】

 次に録音レベルの見方について解説します。画面に表示されているL=Left(左耳に聞こえる音)、R=Right(右耳に聞こえる音)です。その横にあるものが録音レベルを示すバーです。録音待機状態にして声を出すと反応するかと思います。これが、録音している音の大きさになります。バーの下に右から「-0、-6、-12、-24」とかかれているかと思います。-0に行くほど大きな音で録れるということになります。しかし、この機材の場合は少し勝手がというか癖が変わっています、普通は「録音する時は、できるだけ大きな音で録る」というのが大原則なのですが・・・。

 結論から言うと、いい音で録るには「-12dBに合わせるのがいい」という事になります。理由は、-12dB以上になると「音が割れたり、歪んだり」するからです。「割れたり・歪んだり」というのは、録音の許容量を超えてしまってガリガリといったノイズになってしまうという事です。Zoom社のH4やH2のシリーズは、何故か-12 dB以上は音が割れます。これは、もともとの機材の設定のせいなのか、それとも使っている部品のせいなのかはわかりませんが、そういったもののようです。ですので、普通は0dBに近いレベルで録音するところを-12dBで録音します。小さい音で録音する事に抵抗があるかもしれませんが、これは後から説明する「編集」の段階で音を大きくすることができるので問題はありません。

 さて、これで前回と今回をあわせて、おおよその録音方法の説明は終わりました。これから実践です。

【自分自身を録音】

 まず、自分自身の演奏を録音する場合、録音機との距離はおおよそ1m~2mほど、下から狙うような感じで録音する方が良い音が録れます。理由を説明します。フルートなどの管楽器の場合、普通は音の発生源・すなわち歌口近辺が一番良い音がでます。しかし、尺八の場合は少し勝手が違います。確かに尺八も歌口周辺が一番良い音が録れるのは確かです。ですが、尺八には筒音や指を動かした時にでる微妙なサワリ音(ゴーストノート)というものがあり、その存在が非常に重要になってきます。録音した尺八をこの音の有る無しで聴き比べると、尺八かフルートか判別が困難なほどです。つまり、この音が入っていないと「尺八らしい音」とはならないのです。ですので、この尺八独特の音を入れる為に下から狙って取ります。正座奏・椅子座奏でもミニ三脚などを録音機につけ、すこし地面から浮かすようにして録る方がいいかと思います。私は、「ゴリラポッド」と呼ばれる、足がタコのように自在に動かせる三脚を使っています。

【他人の演奏を録音】

 次に演奏会やどなたか上手い方の演奏を録る場合です(無許可で録音してはいけません。録る場合は、録音が可能かどうか聞いてください)。こういった場合は、上記の個人の録音のように近くで録れないことが大半です。また、出来うるならばその空間の雰囲気ごと録るというのが大切です。例えば、コンサートホールならコンサートホールの音、屋外なら屋外の音といったように出来るだけその場の雰囲気ごと録ってやることでよりリアリティが増し、後から聞いた時に記憶と強く結びつきます。

 それでは、その「空間ごと録る」にはどうすればいいのか。それは、離れて録音することです。被写体から2m以上離れ、また壁などからも同様に離れます。できれば三脚などを利用して、高さも少し上げて録音できれば、なお良いです。最寄の市民ホールなどに行ってもらえれば、ホールの空中にマイクが吊り下げられていると思います。それと同じ効果を狙っています。何故、このような事をいているかというと反射音を録音する為です。

 詳しくは、「幻海の効率的尺八練習法」に記載していますので、そちらを見てもらいたいですが、ざっと説明しますと。人間の耳は、例えば誰かの尺八の演奏を聴いた場合、その被写体から直接聴いた音を①直接音、その被写体から出た音が壁などに反射した後に耳に届いた音を②反射音といいます。この二つの音が耳に届くには、微妙ながらタイムラグ(時差)があります。それを聞き取る事で人間は空間の広さを認知する事ができるというわけです。つまり、その①+②を上手く録音して上げる事で、その場の雰囲気を録りこむことが出来るというわけです。

 上記のような方法で録音します。文章で見るととても難しそうに感じられるかもしれませんが、これらはただのテクニックの話です。ようは、「録音ボタンを押して適切な音量に調整してやれば良いだけ」ですので、難しく考える必要はありません。一番大切なのは、録音ボタンを押してみるということだけです。

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