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楽曲解説 -タ行-

 邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。

滝落ノ曲/瀧落(タキオトシノキョク/タキオチ)

 尺八古典本曲、琴古(キンコ)流、明暗対山(ミョウアンタイザン)明暗真法(ミョウアンシンポウ)流西園(セイエン)流の本曲。名称は、瀧落(タキオチ)、滝落ち(タキオチ)などとも。瀧落には、夏の涼気を納めるとも云う。巣籠千篇、瀧落千篇と呼ばれるほど、自由自在に吹くためには長い稽古が必要であるともいわれている。
 一月寺伝(琴古流)と普大寺伝(明暗対山、西園流)は、始まり出しが乙と甲とテレコの違いがあるものの、曲調はほぼ同じ。一月寺(金先派)に属する普大寺だけあって、当然というべきであるが、このように同じ曲調が残りながらも、現在の吹奏法などが異なる点は、本曲・流派研究にとって非常に価値があるといえる。

伊豆修善寺近辺の瀧源寺にある旭滝 尺八修理工房幻海 伊豆の修善寺に近い、瀧源寺(ロウゲンジ)にて住職が作曲したとも、北条早雲の息子、北条幻庵が作曲したとも伝説がある。瀧源寺には、旭滝と呼ばれる大きな滝があり、何段にも落ちていく様は、曲のイメージと符合するような気がする。現在の曲は、一月寺(イチガツジ)あるいは普大寺(フダイジ)伝といわれている。真法流に多少曲調のことなる明暗寺古伝も伝わっている。この曲を裏調子で吹いた、桜落(サクラオチ、サクラオトシ)という曲もある。
 楽曲は、瀧の水がとうとうと落ち、流れていくさまを思わせる。吹奏の時は、行く川の流れの如く、一切をためらわず、ただ水の様に自由に吹き流したい。
 タオキオトシと読むか、タキオチと読むかで主観的な心情か客観的な心情か、言葉の意味が変わってくる。そのあたりも曲調に乗せられるといいのだが。また、滝落しには、別に大雨を形容する言葉としての意味もある。その他、似た名称の自然現象として「滝鳴(別名に天狗の木倒し)」というものもある。これは、夜更けの静寂の中で滝に石や木などが落ちる際に起きる音で、物理的には小さな音でも非常に大きく聞こえるという。

 伝来については、上記の瀧源寺伝来説が通説であるが、三味線や一節切の古楽譜の中には「瀧落スガガキ」などといった名称もあることから、これら器楽曲からの移曲である可能性もある(もちろん、瀧源寺伝から器楽曲へ移された可能性もある)。
 また、同様の名称に沖縄に琉球古典音楽として伝わった「瀧落菅垣(タチウトゥシスガガチ)」という器楽合奏曲もある(ただし、こちらは乱輪絶を原曲としている)。

※ 写真は、瀧源寺にある旭滝。解りにくいが滝の中腹に展望台があり、絶好の献奏ポイント。

 余談だが、瀧源寺の八世住職・法山志定(※)が、近くを流れる狩野川の岸辺で尺八を吹いていたときに、ふと鮎の習性(※)に目が留まり「友釣り(鮎を針につけて泳がせて、他の縄張りに侵入させて、流している針に引っ掛ける釣り方)」を考案したと言い伝えられている。
 また、この曲を産婦に聞かせると乳の出が良くなると云われているが俗説。同じように三谷も聴かせると産後の育ちがいいと云われているが、これらは托鉢の理由づけであったのかもしれない。
 樋口対山直門の清水静山は、入門後三年、瀧落ばかり吹かされ、それが嫌である日、対山の前に尺八とナタをもって「これ以上、瀧落ばかりなら私は尺八をやめます」といって尺八を真っ二つに割ってしまったらしく。その数年後に親戚の結婚式で、どうしても「尺八を」と請われて、しかたなく唯一吹ける瀧落を吹いた所、来賓客は静粛に聴いたばかりか涙を流しながら「いい演奏だった」と称えたといい、それを知った清水静山はすぐさま汽車に飛び乗って対山の元へ訪れて「やっと先生の教えの意味が解りました」と頭を下げたという。

※法山志定(ほうざんしじょう)。残念ながら山津波などにより古文書類は失われてしまったというが、修善寺周辺の古老の言い伝えによれば、法山志定が尺八を練習していたという狩野川の大岩は、修善寺から旧道136号線に合流する手前の本立野の「畑入口」バス停下の流れだという。

※鮎は岩肌の苔を食べる草食の魚でエサ釣りでは釣れなかったが、縄張り意識が強く、自分の食事場所に他の鮎が侵入すると体当たりをして追い出す習性がある。ただし、大雨などで増水し、岩肌の苔が極端に不足するとエサを分け合うようになるので釣るのが難しくなるという。


参考音源:琴古流 滝落ノ曲(提供:木村氏 使用管:8寸四郎管)

瀧落ノ曲の楽譜サンプル、尺八修理工房幻海
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参考音源:瀧源寺伝 瀧落(使用管:地無し古管 in D)


参考音源:瀧源寺伝 瀧落(志村禅保師 使用管:三尺三寸管)

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