尺八コラム 限界突破!
今は尺八をオークションする時代 2012/10/04
尺八業界で当たり前とされていた「流れ」が次第に変わってきています。今までは、師匠につき、その師匠から尺八を譲ってもらうか、製管師を紹介してもらって新管を買うというものでしたが、昨今ではオークションで買うというのが主流になりつつあるようです。まさに、インターネットの時代、世間が狭くなったものです。そんな、オークションで手軽に尺八を手に入れる時代だからこその注意、というものを少し書きたいと思います。
「まず大前提、9割はおかしな尺八」
オークションで売られている尺八の9割はおかしな尺八だという事を忘れてはいけません。「そんな事はない、いい出物もある」という意見を確かに否定はしません。私が修理した物を友人がオークションに出品したりもしているようですので、そういう物もあるでしょう。
しかし、そんな事はレアケースです。何故、そんな事がいえるのかといいますと、まずオークションに出品する状況を考えれば当たり前です。それはどういった状況でしょう?
① まったくの素人(一般・業者ともに)が家にほったらかしにされていた尺八を出す時
② 玄人が気に入らない尺八を売りたい時
大きく別けて、この2通りです。
①の場合は、長い間ほったらかされたので言わずもがな。乾燥によって割れ、紫外線によって漆は弱り、歌口は欠けたり虫に食われる。これだけで、ちょっと吹くには厳しいという事が解るでしょう。
②の場合、これは一見にはいいものに見えるかもしれない。でも考えてもみてください。あなたならお気に入りの尺八を出品しますか?もしも、出品する状況になったら一番気にくわない尺八から順に手放しませんか?つまり、そういうことです。
「バブル時代の尺八には気をつけろ」
もう一つ、オークションで気をつけなければいけないポイント、それはバブル時代に作られた尺八には気をつけることです。何故かというと、この超好景気な時代、尺八業界にとっても前代未聞の好景気でした。作れば作るだけ売れる。作るのが間に合わない、出来たはしから買っていくと悲鳴を上げるほどの売れ行きです。ウワサでは尺八御殿が建ったなんてことも聞きます。そんな時代であったからこそ、有象無象というものが湧いてくるのも、また事実です。有名工房のものはしっかりしているが、それ以外はまぁ、酷い物が多い。しかも数が多いので、私のところへもよく修理を持ち込まれますが「これ新管買った方が安くすみますよ」というのがたくさんあります。例えば、八寸なら長さが54.5cmなだけで指孔はおかしく、中継ぎが極端に狭くゴソゴソ、歌口はすぐに割れが入る・浮いてくる、見た目も何かゴテっとしている。といった具合で、ツッコミどころは上げるとキリがありません。これで、鳴るならいいのですが、どうがんばっても音が鳴らない。ですので、こういうのだけは手を出さないでほしいですね。
なら、どういった尺八なら手を出していいのか。これが気になるところでしょう。まず、安心なのはなんといっても有名工房、銀越・玉水・露秋・昌山・真山・精華堂・一城。この辺りのものなら、前オーナーが変な事してない限りは、オークションでも大きな間違いはないでしょう。琴古系なら○童(系図で中央より上に名前のある人)・雪洲、まず出ないでしょうが四郎、鈴慕。ただ、これらの有名どころはオークションでも高値がつくのでしょうけど。
これはやめた方がいい・・・というのが知りたい場合は、ご相談にのりますよ。
さて、結局ながながと書き綴りましたが、言いたい事はひとつです。五七五でいうと・・・
『オークション 買うのはいいけど 修理しろ』
これに尽きます。そのままの使用だけはやめられた方がいいかと・・・、クセのある尺八を吹いて癖になったり、嫌いになったりしては元も子もありませんから。オークションに手を出される際には、修理を前提で購入金額を検討してもらえたらと思います。
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