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尺八用語集 -タ行-

 尺八の演奏技法や諺などの用語集。

大甲(ダイカン)

 低音(乙音・呂音)部の2オクターブ上の音。頻繁に使用する音は限られているが、一部の曲にはあまり使用しない音を使うものもある。また、楽器の良否を判断する材料にもなる。良い楽器は大甲がちゃんとなるものが多い。

 尺八の通称。尺八の修行を竹道といい、尺八と箏・三味線を合わせて糸竹(イトタケ)という。

タバ音

 腹圧のみでおこなう玉音の上位技法で、日本でも出来る人は数人しかいないといわれている。おそらく、急激な腹圧で胸部やのどや唇を間接的に振動させているのだと思うが、詳しくはよく解らない。少ない情報と人間の身体操作から考えると、私は玉音+腹圧もしくはモンゴルに伝わるホーミーに近い技法なのではないかと思う。

玉音

 正式な奏法の玉音。のどをうがいをする時の様に震わせて音を変化させる。これを身につけるためには、まず水を使ったうがいの感覚を覚え、次に水を使わず空うがいになれ、それから音を出す練習をするとわかりやすい。早くしたり、遅くしたり自由に出来ることが肝心。横山勝也師は、玉音を練習する際「六段」を全て玉音で吹ききる練習をしていたという。似た技法に筒音・口車がある。

タマ音

 舌を高速で動かすことでおこる玉音。西洋名はフラッター(フラッターツンゲとも)またはタンギングという。舌でおこなう場合は、速度の調整がどうしても難しく、どうしても味がでない。本曲には向かないような気がする。その分、現代曲や合奏曲には音程の面からはオススメである。おそらく、錦風流の口車はこれに相当するのではないかと考えられる。詳しくは、ハ行のフラッターの項を参照

段合(ダンアワセ)

 地歌・筝曲において数段からなる曲、または数段からなる手事を2人以上で合奏する場合に、奏者を2組に別け、一方が1段を奏する時に、同時にもう一方が2段を奏する演奏法のこと。尺八曲にもある。

段返し(ダンガエシ)

 地歌や筝曲の手事において拍節が同数で数段に別れている場合、これを2人以上で合奏する際、2組に別れて一方が1段~2段に順に奏している間、他方は2段~1段へと入れ替えて奏する演奏法。例として楫枕がそれにあたる。また、残月は手事の中から拍節が同数のものを合わせて奏する。

タンギング

 音をはっきりと際立たせる為に舌を使う演奏技法のこと。シングルタンギング・ダブルタンギング・トリプルタンギング・フラッタータンギングの数種類がある。タンギングを使い音を鮮明に出すためには、舌先が上の歯のウラに触れるようにする。

シングルタンギングは「フ、フ、フ、・・・」とお腹で息を吐くように行うと同時に舌先を上の歯のうらにつけ「タ、タ、タ、・・・」と発音するように音を出すようにする。

ダブルタンギングは、シングルタンギングと同じようにしながら「トゥ、ク、トゥ、ク、・・・」あるいは「トゥー、トゥル、トゥー、トゥル、・・・」というように発音するように音を出すようにする。

トリプルタンギングは、同様に「トゥ、ク、トゥ、トゥ、ク、トゥ、・・・」というように発音して音を出す。

フラッタータンギングについては、ハ行のフラッターの項を参照

チギリ・ツギリ・チキリ

根笹派錦風流の技法で、首振りやナヤシに近い奏法。コミ吹きと併用する。

尺八の割れ止めの為に入れる銀鋲のこと。俵型や鼓型のものがある。工程のめんどくささに比べ、割れ止めとしての耐久力は弱く、昨今ではあまり用いられなくなった。

調律尺八(チョウリツシャクハチ)

 竹の内部の凹凸を漆や砥粉を用いた地と呼ばれるものを添加することで平衡にし、西洋音楽的な調律を行なった尺八のこと。別名に地塗り尺八、現代尺八とも呼ばれる。
 平衡にすることで、音程が安定し、音量も向上した。なので合奏や西洋音楽的な音の出だしの早い曲を吹くのには非常に適している。ただし、そのために竹本来の独特の響きというものは失われてしまっている。
 反対語として、虚無僧らが吹いた尺八を普化尺八、虚無僧尺八、地無し尺八などと呼ぶ。

ツキ

 メリよりカリへ、すなわち引いたアゴを軽く突き出すように奏すること。小ナヤシともいう。

筒音(ツツネ・ツツオト)

 ①笛や尺八において全ての指孔を閉じて出す音、基音。②玉音と同義のように使用される場合もあるが、少し玉音よりも荒い音を特に指す。

鼓吹(ツヅミブキ)

 尺八の演奏法の一種。鼓の形のように最初を強く、中間を弱く、最後をまた強くする吹き方。強弱の抑揚が大きく、独特の情感を得ることができる。神如道はこれが非常に上手く、彼を尺八の名手たら占めた要因の一つでもあった。

露切(ツユキリ)

 托鉢中に管内に溜まった露を吹き飛ばすという意味で吹かれていたものが、いつしか曲の〆として決まったフレーズを吹くという意味になった。例、琴古流「レロー」、錦風流「ツレー、ロ(チギリ)」。

露拭き・露切り

尺八の管内を拭うために用いるもの。露切りとも云われる。

デクレッシェンド(decrescendo)

強弱記号の一つ。強くはじまり次第に弱くしていく。対義語にクレシェンドがある。

天吹(テンプク)

 薩摩(現鹿児島県)周辺に伝承されている縦笛。尺八に似た小型の笛で管長は30.6~30.9cm(約1尺)で直径約2.5cm、節を3つ残した状態であり、指孔は前4つ後1つと尺八と同じ。ただし、楽器の分類としては、尺八というよりも中国の縦笛である洞簫と一節切の特徴を併せ持った楽器である。竹材は、布袋竹か真竹を使用している。天吹は、長さは一節切とほとんど同じで音律も「ラ・ド・レ・ミ・ソ・ラ」と同じだが、尺八や一節切と違って筒音をそのまま持ちいづ、沈って半音低い「ソ~ソ♯」の音を出す。
 この天吹でも門付けを行なわれていた。江戸時代(天正)頃に薩摩武士に愛用されていた。現在はほとんど衰滅してしまっている状態である。詳しくは、楽曲解説の天吹を参照のこと。

トリル

 装飾音とも呼ばれ、記譜されている音とその上の隣接音とを交互に細かく演奏する技法のこと。ときには、半音でおこなわれることもある。尺八独自の奏法であるもみ手もトリルの一種に含まれる。

トレモロ

同音または複数の音を規則的に反復する奏法のこと。ヴィブラートとは区別される。

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尺八修理工房幻海