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尺八・虚無僧、ゆかりの地

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虚霊山 明暗寺(別称:臨済宗東福寺 塔頭 善慧院)

尺八根本道場。普化尺八の虚無僧寺の総本山の一つ。もとは京都大仏本池田町にあった。

京都にある虚無僧寺の京都明暗寺の参考画像01。 尺八修理工房幻海 開基は、虚竹了円禅師(読みはキョチクではなくおそらくキチク、寄竹とも)で、普化尺八の開祖とされ、普化宗六派のうちの寄竹派とされている。
 元は臨済宗妙心寺(林下を代表する寺院)の派に属し、同じく妙心寺派の興国寺の末寺でもある。その為、虚無僧寺の別格本寺ではなく興国寺末虚無僧本寺と称して終始した。現在は臨済宗大本山東福寺の塔頭でもある。
 もともとは京都三条通白川橋近郊(粟田口界隈)にある宗宅という町人の土地を間借りして天外明普(開山、二世)が草庵を結び、のちに焼失してしまったので淵月了源(14世、中興の祖)が京都大佛池田町(方広寺界隈)に移転して寺を建立し、虚無僧の正邪を取り締まるようになったという。
 江戸時代には、関東下総の一月寺武蔵の鈴法寺と並び、虚無僧を取りまとめ、三具三印を許可し取り締まる寺として絶大な権力を有していた(一月寺・鈴法寺は普化正宗をと称し、明暗寺は普化宗虚無僧宗門を称した)。また、尺八指南所を設け、尺八を武士以外の者にも暗黙で教えていた。
 しかし、幕末期には反幕思想をもって王政復古に奔走したとして33世首座・玄堂観妙や寺徒などが斬首に処せられ、力を失った。その一方で、指南役・製管師であった2代目俣野真龍は新撰組の芹沢鴨や土方歳三と懇意にしていたことから、親幕・反幕双方の考えが内部にあったものと考えられる。
 また明治に入り神仏分離・政教分離の流れになると権限を返上・解体されてしまう(これまでの虚無僧権限による乱暴狼藉や徳川幕府との癒着によるところも大きい)。 最後の看首(正式ではなく預かり)であった自笑昨非は、寺宝などを東福寺塔頭の善慧院に託し、寺領の一部を売り払って僅かの土地を手に入れ、明暗覚作(アケクレカクサ、のちに日蓮宗に改宗したという)と名乗って貧しく暮らしたという。この明暗覚作が持ち出した文章のうち一部を初代中尾都山に譲り、残りを福本閑斎(虚庵、39世看首)の尽力によって、現在の京都明暗寺に寄贈することになったという。また当時の寺門は紆余曲折を経て、現在は大阪市平野区の大念佛寺瑞祥閣の表門として残っている。
 明治21年に樋口対山を中心に明暗教会として東福寺の勧進という名目をきっかけに、唯一の行化許可証(ぎょうけ、虚無僧許可証)を発行できる組織として再興し、虚無僧(明確に江戸時代の虚無僧とは異なる)の吹禅・托鉢を全国で行脚できるようになった。昭和23年になって「宗教法人 普化正宗総本山 明暗寺」として設立・登記された。現在の本堂である尺八根本道場は昭和44年ごろに落成した。
 誤認しやすいが、この京都明暗寺に伝わっていた本曲は現在の明暗真法流の曲であり、現在主流の明暗対山の伝承曲は樋口対山によって各地の本曲を収集編纂したもので明暗教会発足と同時に新たに興ったもの。
 また古くは、東福寺の明暗教会をはじめ似たような組織が京都には多数あったという。妙心寺の普化教会、建仁寺派妙光寺の法灯教会など。ただし現在では、ほとんど無くなっている。

 京都明暗寺に関する文献類には、34世首座・自笑昨非(明暗自笑)が明暗寺廃宗の整理時に持ち出した古文書(明暗家に伝わっていたが現在は京都明暗寺蔵)、その自笑昨非の経済的な理由から初代・中尾都山へと売却されたもの(関東大震災時に焼失)とがある。この2ヶ所に保管されていた文献は、塚本虚堂によって昭和11年に研究私書本として50部限定で出版され、平成11年に虚無僧研究会によって琴古手帖と一緒に復刊販売されている。中塚竹禅著「琴古流尺八史観」にもどうようのものが記載されている。この他に、京都明暗寺の書類を筆写したといわれる「虚無僧宗禁記集」というものがある(2016年ごろ復刊予定)。

 毎年、11月初め頃に「虚竹禅師奉賛会」主催による尺八献奏大会というものが開かれ、プロ・アマ問わず全国の尺八愛好家が集い、虚竹禅師の像に向かって吹奏する。聴講は、座席自由で無料。 また、この明暗寺は庭園が美しいことで有名で、アラハシゴケという苔が絨毯のように一面に生え、見ごたえがある。

明暗寺の吹簫の本領と悟りの信条:
虚ニシテ而カモ霊、空ニシテ而カモ妙(キョニシテシカモレイ、クウニシテシカモミョウ)
明暗雙々(ミョウアンソウソウ)

〒605-0981 京都府京都市東山区本町15丁目797
参考URL=臨済宗 東福寺ホームページ

京都 明暗寺 -風景写真-

京都にある虚無僧寺の京都明暗寺の参考画像02。 尺八修理工房幻海 京都にある虚無僧寺の京都明暗寺の参考画像03。 尺八修理工房幻海 京都にある虚無僧寺の京都明暗寺の参考画像04。 尺八修理工房幻海 京都にある虚無僧寺の京都明暗寺の参考画像05。 尺八修理工房幻海 京都にある虚無僧寺の京都明暗寺の参考画像06。 尺八修理工房幻海

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【写真提供】京都を歩くアルバム=他にも京都のお寺などをたくさん紹介しています。