道具箱
尺八製管時に使用する道具や製管師の独特な言い回しなどの用語集。ここでは、尺八の保管方法や尺八本体のことから、尺八の製管に使用する道具の紹介や製管師が使う独特な言い回しなどを解説していく。
尺八の保管方法
製管師直伝の尺八保管方法。このやり方で8割は割れない。残り2割は、もう運が悪かったと思ってください。
必要な材料
- 左上から
- ・植物性の油:少々
- ・尺八本体
- ・ウエス
- ・傘用の袋:1~2枚
- ・ゴムひも:1つ
- ・露拭き
- ・皮袋or布袋(あるなら)
①演奏後の尺八は、しっかりと管内の水気を拭き取る
演奏後は、しっかりと管内の水気を拭き取るようにする。そうしないと漆が剥げる元になってしまう。特に中継ぎ・歌口周りは、よく漆が剥離して修理の依頼がくるのでしっかりと。
②竹に植物油を塗りこむ(月に1回程度)
竹の表面に植物油を塗ることで保湿効果が生まれ、割れる可能性を軽減してくれる。しかも、光沢を生む特典付き。あくまでも少量を柔らかい布(ウエス・メリンス・綿など)ですり込み伸ばすようにし、しっかりと拭き取る。これの目的は、あくまで竹の表面に薄い油の膜を作り、水分の蒸発を防ぐことだ。あまり多い量を塗るとツルツルすべって演奏に支障をきたすし、油が劣化するとベタついてくるのでうっとうしい。使う油は、竹と同じ植物性で天然の椿油やオリーブオイルなどの潤油系がよい。くるみ油などの乾油系は、艶はでるが保湿効果は少ない。
③傘用の袋に尺八を入れる
使用するのは、スーパーなどにある濡れた傘を入れる袋が私はオススメだ。薄手だが、その代わりに竹との密閉率が高いので重宝している。しかも、破れたらすぐに替えが利くのもいい。薄いことに不安なら2重にすればいい。厚手のものは、硬すぎて空気の密閉率も悪いし、入手も面倒だ。
④袋に息を軽く吹きいれる
乾燥が怖ければ、袋に軽く吐息を入れる。袋の内部に湿気の靄が薄くできればOKだ。余分な空気は袋を絞って抜く。
⑤袋の口を回転させて空気が入らないようにする
袋内部を空気が流動して、乾燥する事が一番恐ろしいので、袋の口を回転させ空気が漏れたり・入らないようにする。こうする事で袋の中は、一種のサウナ状態になっている。
⑥ゴムで袋の口を縛る
ゴムで袋の口を縛るのだが、私は和菓子などについているゴムひもをオススメしている。輪ゴムは、紫外線で劣化して切れやすいし、すぐに伸びる。その点、ゴムひもは伸びにくいし、切れにくい。しかも、見た目にも安っぽくない。
⑦直射日光の当たらないところで保管する
皮袋や布袋があるならそれに入れ、直射日光・エアコンが直接当たらないところで保管する。最低でも3ヶ月に1度は吹くようにしてもらいたい。
というわけで、上記保管法をおこなってもらえば割れる可能性を大幅に軽減する事ができる。私が所有している製管後の尺八は、この方法で未だ割れたことがない。もちろん日本国内だけにとどまらず、気候の違う海外旅行でも大丈夫だ(実際に、ヨーロッパ・オセアニア・アジア圏には旅行の際に持っていって実験している)。これで割れるなら運が悪いか、その竹がよっぽどへそ曲がりか、だろう。
尺八の保管方法や管理の仕方などについて、詳しくは「まるごと尺八の本(葛山幻海 著)/¥1600」に記載しています。よかったらそちらも参考になさってください。