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尺八用語集 -サ行-

 尺八の演奏技法や諺などの用語集。

笹音(ササネ)

 笹の葉の肌触りのようにかすれさせた音といった意味。ムラ息ほどではないが、音に鳴らない風切り音を出すこと。半ムラ息とも。

笹吹き

 ユリなどのヴィブラートを一切加えず、ただひたすら真っ直ぐな音を吹き切ること。最初は弱く、真ん中を強く、そして弱くなっていくという笹の葉のような形になるため笹吹きと呼ばれる。似たようなものに、虚吹き・鼓吹き・棒吹き・くさび吹きなどがあり、これらをまとめて虚無僧吹きと総称する。

三具三印

 虚無僧の証である持ち物のこと。三具とは尺八・天蓋・袈裟をさし、三印とは免許状・虚無僧証明書・諸国往来自由の通行手形をさす。真意は定かではないが、免許状のオリジナルには、徳川家康の裏書があるとされ、それを写したものを所持していたと云われている(ただし江戸時代中に紛失。あるいは偽造の可能性も)。これが、あった為に虚無僧の治外法権が可能であり、乱暴狼藉・押し入り強盗などの事件も多かったとされる。

地柄(ジガラ)

 竹の生育上の環境や経年によって生じるゴマ粒のような柄のこと。似たようなものに斑入り(フイリ)というものがあるが、こちらは好みが分かれる。

シズメ吹き・沈め吹き

 尺八の奏法で、メリ→カリ→メリ→カリ…を数回繰り返す奏法。雰囲気としては回しユリを大げさに数回繰り返したもの。ロの大メリやウのメリに多い。メリの方がカリよりも音量が大きくなるように吹くのがポイント。

地無し尺八(ジナシシャクハチ)

 竹の内部には節が残り、現在の尺八とは一線を画した尺八のこと。正式には普化尺八、虚無僧尺八などと呼ぶ。
 尺八の内部は、地と呼ばれる砥粉と漆を混ぜたものがほとんど塗られず、ほとんど竹に穴を開けたままの状態ですある。ただし、中には節を全て落とし、地を少し入れているものもあるので定義は曖昧。音律の調整は、全て節の削り具合や指孔の広げ具合で調整する。地無し尺八は、演奏・合奏用の楽器というよりも修行の為の道具といったニュアンスが強い。しかし、本曲には非常に合う。ピッチは低めで435Hzぐらいが心地よい気がする。特に江戸時代~明治時代頃に作られた地無し尺八を古管尺八と呼ぶ。京都系と関東・奥州系とでは、作りや音色などが異なる。
 反対語として、現代の尺八を調律尺八、現代尺八、地塗り尺八などと呼ぶ。

地塗り尺八(ジヌリシャクハチ)

 竹の内部の凹凸を漆や砥粉を用いた地と呼ばれるものを添加することで平衡にし、西洋音楽的な調律を行なった尺八のこと。正式には調律尺八、現代尺八などと呼ばれる。
 平衡にすることで、音程が安定し、音量も向上した。なので合奏や西洋音楽的な音の出だしの早い曲を吹くのには非常に適している。ただし、そのために竹本来の独特の響きというものは失われてしまっている。
 反対語として、虚無僧らが吹いた尺八を普化尺八、虚無僧尺八、地無し尺八などと呼ぶ。

地盛り尺八(ジモリシャクハチ)

 竹の内部に漆や砥粉を用いた地と呼ばれるものを添加することで、西洋音楽的な調律を行なった尺八のこと。地塗り尺八の前段階の尺八で、調律尺八(地塗り尺八)と普化尺八(地無し尺八)の中間のような構造になっている。
 最初にこれを行ないだしたのは琴古流の荒木古童(竹翁)であるといわれているが、定かではない。その後、三浦琴童、山口四郎、山崎竹隠らが行なっていたが、非常に調律と響きのバランスが難しく、商売には向かないため、いつしか作られることはなくなった。

十三冠(ジュウサンカムリ)

 古典本曲、阿字観などの中に出てくる特徴的なユリによる旋律型の一つ。他に十六カムリや三十六カムリといったものもある。

十二律

 互いに約半音ずつほど隔たった12個の音をもって8度の音程を満たす音律のこと。西洋音楽の十二平均律とは厳密には異なる。
 日本および中国においては、基音[日本では壱越(D)]より順番に順八逆六の法をもって11回重ねてコレを作る。それによって作られた高さの順に壱越(イチコツ)、断金(タンギン)、平調(ヒョウヂョウ)、勝絶(ショウゼツ)、下無(シモム)、双調(ソウヂョウ)、鳧鐘(フショウ)、黄鐘(オウシキ)、鸞鏡(ランケイ)、盤渉(バンシキ)、神仙(シンセン)、上無(カミム)と呼ぶ。尺八の一尺八寸が主流なのも、この基音(壱越)に合せて。

十二律 尺八修理工房幻海

唱歌(ショウガ・ショウカ)

 楽器の旋律を口ずさむ一種の節回しで音色で曲調や強弱などの微妙なニュアンスも伝えることができ、日本の伝統芸能に多くみることができる(※ようは鼻歌みたいなもの)。洋楽でいうところのソルミゼーションの一種。楽器の音に見立てた擬音を用いて旋律やリズムを現す。楽器の練習・暗譜・伝承のために用いられる。口三味線(クチジャミセン)とも。雅楽や三味線・琴に多く用いられる。邦楽器の楽譜にカナ文字が多いのも唱歌のため。唱歌の時には、ハリセンでリズムを取ることが多い。

職屋敷(ショクヤシキ)/
惣録屋敷(ソウロクヤシキ)

 盲人を統括するための官庁として、平家琵琶・地歌・筝曲・按摩(あんま)などの盲人によって組織された。京都にあり、最高権威者である検校(総検校、職検校)によって支配され、それに別に任命された10名の検校によって盲人に関する事件を処理していた。また、盲人の技術の審査も行い、その審査料としての上納金によって検校・別当・勾当・座頭の官位を授けた。
 一時期、江戸の神田町にも職屋敷のような盲人を管轄する惣録(そうろく)屋敷が組織され、職検校よりも上位の惣検校が将軍によって任命されたが、のちに京都にその権限を戻し、関八州ならびに周辺のみの支配という形になった。
 明治4年に新政府によって職屋敷は廃止され、それにともない検校を初めとする盲官はなくなった。

スラー

 楽譜上で高さの異なるふたつ以上の音の上または下につけられる弧線(尺八譜の場合は横)。スラーのつけられた部分はレガート(滑らかに)演奏すること。弦楽器(ストリングス・セクション)の場合は、スラーはひと弓の動きの範囲・動きを示しているが、管楽器や声楽の場合は一息で奏するつもりでおこなう。つまり2つのスラーの切れ目がはっきりするように、呼吸を変えたり息を切ったりして演奏することを示している。

スリ(摺り・擦り)

 音をスル奏法。大きく別けてスリ上げとスリ下げの2種類があるが詳しい説明は下記を参照。スリを細かく別ける時には、いくつかの表記がある。以下はその種類。

①スリの一、   :上の音を少しスッテ軽く消す。
②スリの二、   :スッテ次の音に続く。
③メリ込みスリ上げ:メリ込みより一気にスリ上げて消す。
④メリ込みスリ  :メリ込みよりスッテ次の音へ移る、あるいは軽く消す。
⑤スリメル    :スリまたはカリからメリ込んで次の音へ移る、あるいは消す。

スリ上げ

 音をポルタメント(滑らか)に移行する技法のひとつ。
 指孔を徐々にスリあげるようにする事で音の角をなくし、移動を滑らかにする方法とメリの状態からアゴを上げる方法、指とアゴの両方でする方法とがある。

スリ下げ

 音をポルタメント(滑らか)に移行する技法のひとつ。
 ただし、スリ上げと違って滑らかにするためにはアゴと指をフル活用する必要がある。例えば、GからFの音にスリ下げたければ、一端アゴを使ってE♭近くまで下げ、そこから指でスリ上げるようにすると音の角がたたない。

ソラ音(空音・カラ音・空息)

 空間からもってきたような音、空間に溶け込ませるような音、それらを意識せずに吹くこと。別に「即今の一音」とも。
 また琴古流では、別にムラ息のように息をワザと音の鳴るエッジ部分から外して吹くことで、ムラ息ほど激しく強くは吹かず、浅音ほどは弱く吹かない、その中間のような吹き方のこと。別名にソラネ、空息、笹音(これは笹の葉の肌触りのようにかすれた音といった意味)と呼ばれることもある。

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