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尺八・虚無僧、ゆかりの地

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鷲峰山 興国寺(旧名:真言宗 西方寺)

臨済宗妙心寺派の寺院。本尊は、釈迦如来。和歌山県の由良町にある。

和歌山県由良にある尺八伝来のお寺、鷲峰山興国寺の参考画像01。 尺八修理工房幻海 葛山景倫(カツラヤマカゲトモ)/僧名願性(ガンショウ)が、暗殺された亡き主君、三代将軍・源実朝(ミナモトノサネトモ)の菩提を弔う為に西方寺として建立した(西方寺とは、亡き実朝が宋への思いを馳せていたことから名づけられた、また西方浄土とも掛かっている)。

 葛山景倫は、源実朝が暗殺されたという報を聞くとその菩提を弔う為に高野山へ入山し、のちにその忠義を北条政子から評価され、由良一体の地頭として任命される。その後、金剛三昧院へ入山中に知り合った心地覚心(シンチカクシン、のちの法燈国師)に実朝公の遺髪の一部を宋へ届けてもらえるよう預け、覚心が宋から戻ってくると、実朝公とその頃には没していた北条政子の菩提を弔ってもらう為に、西方寺の住職として招いた。興国寺という寺名は、覚心没後の42年に後村上天皇から追贈され、それ以来興国寺と呼ばれるようになった。

 尺八伝来は、覚心が渡宗中に坑州の霊洞護国仁王寺に入り、無門慧開(ムモンエカイ、仏眼禅師)について修行していた折、同参していた居士張参(チョウシン)から張氏家伝(張伯から16代)の尺八を習ったと一説には云われている。この張参の祖先が、普化禅師の鐸の音を尺八に移した張伯と云われ、その曲が尺八根源曲の一曲、虚鈴といわれるが真偽は定かではない。
 覚心は帰国の際、4人の弟子「宝伏(法普))・国作(国佐)・理正(理生)・宗恕(僧如)」を伴い、興国寺裏手の山谷に草庵を建てて住まわせた。この谷を普化谷(四居士谷)、庵を広化庵と呼んだという。その四居士が尺八の上手であったといわれている。また、四居士が湾に舟を浮かべて尺八で遊んでいた折に、岸で尺八を聞き感動して弟子になったのが、尺八の祖・虚竹禅師(寄竹)と伝説されている。
 その後の伝承によれば、宝伏が宇治の吸江庵に住み着いて金先(金先派」、斯詮派の祖)と法義(根笹派の祖)の二人の弟子を得て、関東に下向。その弟子二人が、一月寺と慈常寺を立てたという。他の3居士については不明だが、近年、新たに僧如について記された京都明暗寺に関する資料が発見された。

 昭和初期には、尺八伝来の地・興国寺を盛り上げようと谷北無竹(タニキタムチク)、津野田露月(ツノダロゲツ)、谷狂竹(タニキョウチク)、小泉止山(コイズミシザン)、浦本折潮(ウラモトセッチョウ)、桜井無笛(サクライムテキ)、高橋空山(タカハシクウザン)、などなど全国の名だたるメンバーによって法燈教会が設立されるが、残念ながら内部分裂により霧散。その後、前団体とは異なる法燈国師奉賛会が新たに設立され、今日も活動している。

 京都鞍馬山と同じく、天狗で有名なところでもあり、寺内には大天狗の面と天狗命根岩と呼ばれる甲羅にそっくりな、なんとも不思議な石がある。由来は本堂が火事に見舞われた時、山から天狗が降りてきて火を消したという伝説からきており、毎年8月ごろにはそれを模した天狗火祭りというお祭り催される。
 3月ごろには尺八献奏大会もあり、近郊には景勝地である白崎海岸があるので、お出かけの際はいろいろと楽しんでもらいたい。他に覚心が伝来したもので有名なものとして醤油の元といわれる怪山寺味噌(きんざんじみそ)がある。


参考音源:普大寺伝 虚鈴

法燈円明国師(ホットウエンミョウコクシ)=
鎌倉時代初期~1298。姓を常(ツネ、一説には常澄)、名は覚心、号は心地、字は無本。
 信州神林(現長野県松本市)の生まれで、東大寺で出家し、高野山で密教を学び、退耕行勇に禅を学び、金剛三昧院で願性と交友した。後に東福寺から紹介を受けて宋へ渡り、名刹高僧を歴訪したのち帰国する。帰国後は、金剛三昧院の首座となるが、願性の求めに応じて由良の西方寺(のち興国寺)に移る。途中、勝林寺(のち南禅寺)や妙光寺に亀山天皇の命や内大臣の頼みで移るが西方寺に戻り、境内に思遠庵を築いて住み、永仁6年10月13日に九十二歳で入寂した。亀山天皇からは、諡号・法燈禅師を賜り、三十三回忌(1330)には後醍醐天皇から法燈円明国師を賜った。国師没後四十二年(1340)には、後村上天皇から西方寺に興国寺の号を賜り、以来もっぱら興国寺と呼ばれるようになる。

住所:和歌山県日高郡由良町門前

諡号とは=三蔵法師・国師・大師・禅師などの種類があり、天皇や皇帝の師として認められた僧侶に贈られる号のこと。ちなみに三蔵法師号は中華を統一した皇帝のみ贈ることができ、日本では唯一、近江国(現 滋賀県)興福寺の霊仙(りょうせん)のみが与えられている。

法燈国師奉賛普化尺八献奏会 3月末の日曜日

 主催は、興国寺普化尺八道場法燈会。2016年の全国献奏大会は、3月27日(日)の午前8時半ごろ~夕刻まで。参加申し込みは2月末。視聴は自由。総員による調子嘘霊の献笛のち、坐禅ののち、京都明暗寺現看首の児島抱庵師の献笛から順に個々人による献奏が開始される。

興国寺とその近郊 -風景写真-

和歌山県由良にある尺八伝来のお寺、鷲峰山興国寺の参考画像02。 尺八修理工房幻海 和歌山県由良にある尺八伝来のお寺、鷲峰山興国寺の参考画像03。 尺八修理工房幻海 和歌山県由良にある尺八伝来のお寺、鷲峰山興国寺の参考画像04。 尺八修理工房幻海 和歌山県由良にある尺八伝来のお寺、鷲峰山興国寺の参考画像05。 尺八修理工房幻海

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