楽曲解説 -ア行-
邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。
一息（イッソク・ヒトイキ）
尺八独奏曲。ただ一息のみで終止する曲。闇雲に吹くのではなく、吹奏前は己を見つめてただ一息に全てを懸けるつもりで集中するが、吹く瞬間からはそれら全ての虚心を捨てて、ただ神仏や森羅万象に対して己一つをさらけ出す。
名人であった久松風陽は「独問答」でこのような言葉を残している。
上手は曲数にあらず一曲の上にあり、三十九曲は三十六曲なり、三十六曲は十八曲なり、十八曲は三曲なり、三曲は一曲なり、一曲は無曲なり、無曲は気息なり、気息は虚無なり、然る時は何ぞ曲数にかかわることあらんや
つまりこの一息という曲は、一曲であると同時に本曲全曲であり、無曲であり、虚無であり、虚空である。この曲は葛山幻海作ではあるが、形は問わない。それぞれの心を水面に移すが如くである。
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