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楽曲解説 -その他-

 邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。

ページ内 目次:
 ・天吹
 ・天吹の伝承曲
 ・天吹同好会

天吹(テンプク/テンプッ)

 薩摩(現在の鹿児島県)周辺で伝承された竹製の縦笛。薩摩藩士の間で大いに愛され、吹かれていた。また、九州一円では天吹を吹いての虚無僧行脚まであったと云う。別名に薩摩三節竹とも。
 名称の由来は、一説には大祓いの祝詞「天の八重雲吹き放つことの如く」からきているとされているが、正確なところは不明。
 天吹に関する書籍としては、「薩摩の天吹について(白尾國利 著)」や天吹同好会が発行している「天吹(白尾國利 著)」、復刻版の「天吹(白尾國利著、天吹同好会増補)※最下段参照」などがある。

 素材にはコサン竹(布袋竹、ただし亀甲竹のようになっていないもの)や真竹の根に近い部分を用い、節を3つ残した状態で使用する。管長は、平均して約30.6cm=1尺ほどであるが、製作法の都合から個人によってかなり異なる。直径は1.8~2.5cmほどで、指孔の数は、裏1・前4と尺八と同じ(ただし裏孔位置は一節切と同じで尺八よりも高い)。歌口は洞簫(ドウショウ)タイプで尺八とは異なり、内側を削るように作る。指孔はかなり小さく、また管尾の節孔もかなり小さく開けて音締めにしている。このように管尾孔を小さくしているために乙音の筒音は鳴りにくい、その為、基音は筒音ではなく第3孔の音を基準にする。
 もともと独奏楽器であった為か音程はそれほど固執せず、個々人の製作によって異なる。また伝来のものもまちまちである。口伝による製管法によれば、例えば1~2節間が握りこぶし一つと個人の体格差が影響するものであるなど、スケールが曖昧であることがこれの理由であろう。裏孔も現行では他の指と等間隔に開けるものが主流であるが、失われてしまったが別に裏孔を下げる製作方法を用いていた流れもあったようである。裏孔を下げると高音部(ツ・レ)や指抜きの音律がやや下がり、また少し違った趣がある。小鳥が囀るような音を好む。音律の一例として「ラ・ド・レ・ミ(またはファ)・ソ・ラ(またはシ♭)」だが、筒音はそのまま用いず、沈ってソ~ソ♯の音を出す。
 楽譜にした際の音名は、白尾氏が琴古流・都山流の尺八を学んだ為にロツレチハで書かれるが、本来はどのようであったかは伝承が途絶えたために不明。吹奏法として、音が切れる際には指を開放して音を抜く、アゴを素早く上下させるなど、琴古流に近い奏法が見られる。
 楽器は、①一節切からの変形、②中国や台湾伝来の縦笛・洞簫、または朝鮮伝来の短笛からの変形であると考えられている。歌口の形状、琉球や朝鮮使節との交易などから推察するに、後者の方が可能性は高いが、長さなどは一節切の影響のようでもある。また楽器が三節であるところなどは三節切の影響であったのかもしれない。

※追記:私個人の見聞し、吹奏し、製管した印象としては、尺八を元に発展した楽器というよりは、何か別のもの(洞簫・古代尺八)などを元にして一節切や尺八の影響を受けたかのように思える。中国や朝鮮使節からの伝来については、風俗文化や音律の面からは考え難いように思う。

 薩摩の戦国武将・島津氏の当主も笛を好み、15代貴久公、17代義弘公、初代薩摩藩主・家久(中納言、忠常)公らの一節切が現在に伝来し、家久公に至っては箱に自作とまで墨書されたものまで残っている。もしかしたら、一節切から(沖縄・朝鮮半島から洞簫タイプの影響を受けて)天吹へと変化していったのかもしれない。あるいは、古代尺八的な特徴も見られることから、そちらと一節切と融合するような形で残ったのかもしれない。

※ 右府・信長公も一節切を大森宗勲から学んでいたといい、愛管が現存することから、武家で一節切などの縦笛がかなり愛好されていたことが伺える。

天吹 指孔表、尺八修理工房幻海
※↑の図をクリックで拡大します。
※天吹 指孔表が必要な方はお問い合せからご連絡くだされば、PDFかJPEG形式のファイルを差し上げます。

天吹の伝承曲

調べ 彼の山(アノヤマ) 高根(タカネ) 筒根(ツツネ・ツクネ)
テンノシヤマ センペサン イチヤナ
※テンノシヤマは、加治木の蔵王岳を指す。


※ 天吹の伝承曲を聴くことが出来ます。

イチヤナ・アノヤマ・センペサン・テンノシヤマにはそれぞれ稚児唄がある。

イチヤナ:
イチヤナア ニエモンサンナナア、ジュサンシイガハアナデ、ハナデエシオルルウ、
ヒラツドンノカアドデ

アノヤマ:
アノヤマニナア、ヒワガナア、サンビキトマルゲナア、チゴタチュツイヤゲテ、
グワジャネコオ、ジャアネエコオ

センペサン:
センペサアンセンペサアン、サッシャグチャユタイドン(ユモシタイドン)、
オマイノ(オマンサアン)アッカマラ、ヂャンコヂャンコ、ソラアノシャシモハンド

テンノシヤマ:
テンノシヤマテンノシヤマ、マレニタヤマヨ、カイノサキャスコハゲテ、
ツヅツクレバユルグワッタイ(ズルベッタイ)

天吹同好会

 天吹を伝承していた大田良一(号 忠正)が昭和30年に1月に発足した「天吹柴笛振興会」の後を引き継ぐ形で、三木原勝義・白尾國利らが天吹の伝統を後進に残そうと昭和56年発足した。
 また、白尾國利によってそれまで口伝であった製管法・運指表・伝承曲譜などがまとめられた。その後、天吹同好会は平成2年に鹿児島県指定無形文化財の保持団体として認定された。
 伝統的に天吹を吹くものは、その他に示現流や薩摩琵琶も学ぶという。


※ 伝承者・白尾國利師の演奏と天吹同好会の合奏

【参考】
NPO法人 島津義弘公奉賛会
鹿児島県ホームページ

●「天吹(復刻・増補版)」を求めらる場合は、下記に問い合わせを
商品代金:\3000+送料
〒899-0052
住所:鹿児島市上之園町20-17共研幼稚園内 天吹同好会事務局
電話番号:099-254-0986
担当:柚木盛吾

その他の楽曲

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