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楽曲解説 -その他-

 邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。

ページ内 目次:
 ・古代尺八
 ・現存する古代尺八の寸法や材質など
 ・聖徳太子と尺八
 ・古代尺八を吹奏したといわれる人物
 ・源氏物語の尺八、枕草子の横笛
 ・雅楽曲

古代尺八(コダイシャクハチ)/
雅楽尺八(ガガクシャクハチ)

標準的な管のサイズは、
黄鐘切り=1尺8寸(唐小尺、現尺の1尺4寸6分)=約44.3cm。
指孔は表5、裏1孔。
音程=七声の徴、羽、変宮、宮、商、角、変徴、(徴)からなっており、十二律では
ラ(A)・ド(C)・ド♯(C♯)・レ(D)・ミ(E)・ソ(G)・ソ♯(G♯)・ラ(A)。
別名に、雅楽尺八・正倉院尺八、聖徳太子の尺八、洞笙、洞嘯とも。
世界中で日本に唯一、当時のままの古代尺八が正倉院(北倉・南倉)、法隆寺(現 東京国立博物館 所蔵)の2ヶ所に残されている。
材料は真竹ではなく、大陸ものの呉竹(淡竹)などではないかと思われる。

※音程については、正確であるかは疑問が残る。検証は、当時の宮内庁楽部の芝祐泰(しばすけひろ。芝家は代々、龍笛と舞を家芸としている)という龍笛の専門家が吹いたという。貴重な楽器、不慣れな楽器ということもあり、検証作業中でもしっかりとした息の吹き込みはできなかった、という。
 あるいは試奏は一番短い寸法のものを使っていたのかもしれない(※どうやら玉尺八を検証に使ったもよう。この尺八は玉という加工の難しい材質であり、実用よりも装飾用の意味合いが強いので、当時の正確な音程というには難があるように思われる))。正倉院に残っているものには様々な長さのものがあるが標準的な楽器の長さは44.3cmである。私の大まかな管長と音程の計算によれば、F♯前後だったのではなかろうかと思う。

※44.3cmで試作してみたところやはり筒音はF~F♯ほど(内径や管尻形で変わる)であった。もう少し検証を進めたいと思う。ただ、このことから以前の研究データは正倉院に残る中でも一番短いものを計測したのではないかと思われる。

※44.3cmの管長で442Hzの場合、音程は下からF・G・A・B♭・C・D・Eとなる。ただし、指孔によって多少の音程の差があり(±20セント程度)、アゴの角度などで容易に半音程度(筒音F♯)は音程がかわる。また、この律では雅楽曲の演奏に不向きである。さらなる検証が必要。

 もとは、古代中国の唐の国で発展した縦笛で、当時の流行歌を演奏していたという。それが、飛鳥時代~奈良時代にかけて、遣唐使によって雅楽(唐楽、左方)とともに日本に伝来したといわれている。もしこれが事実であるならば、歴史上、日本で一番最初に尺八が演奏されたのは、大宝2年(702年)正月15日に演奏された雅楽曲の「五常楽・太平楽(ゴジョウラク・タイヘイラク)」となる(続日本記に記載)。東大寺の大仏開眼の時にも奏された。
 残念ながら譜面は残っておらず、音名・指孔の押さえ方などは不明。おそらくは現行雅楽の篳篥や竜笛に通ずるように唱歌時のカナ表記と指孔名の2種類があったのではないかと思われる。

 この6孔の尺八の音程から、日本風土特有のペンタトニックスケール(5音音階)である呂旋法(四七抜き音階、レファソラド)が生まれる過程で、変宮と変徴の2音が省かれ(承和八年の楽制改革による国風歌舞への移行時期か?)、現代の5孔の尺八へと楽器がそれに合わせて変化していったものと考えられる。

現存する古代尺八の寸法や材質など

【正倉院 北倉】
玉尺八(寸法:長34.4、吹口径2.0。材質:大理石)
尺八(寸法:長38.2、吹口径2.3。材質:竹)
樺巻尺八(寸法:長38.5、吹口径2.2。材質:竹)
刻彫尺八(寸法:長43.7、吹口径2.3。材質:竹)
彫石尺八(寸法:長35.9、吹口径2.4。材質:蛇紋岩)

【正倉院 南倉】
尺八(寸法:長40.7 、吹口径2.3。材質:竹)
尺八(寸法:長39.3 、吹口径2.3。材質:竹)
象牙尺八(寸法:長35.1 、吹口径2.3。材質:象牙)

【法隆寺(現 東京国立博物館 蔵】
尺八(寸法:長44.2 、吹口径2.0。材質:竹)
刻彫尺八(正倉院尺八の模造品・明治頃製作)
彫石尺八(正倉院尺八の模造品・明治頃製作)
尺八(寸法:長39.4、正倉院尺八の模造品・明治頃製作)

※材質の竹は、正倉院によればマダケとされているが、マダケ自体が中国原産とも日本自生ともいわれているので疑わしい。少なくとも日本産のマダケと中国産の竹とでは、節間などかなり質が異なる。実物を日本に自生する現行のマダケで作ろうとしても節間や内径などの再現がかなり難しいように思う。当時、宮中にも植えられた呉竹(京都御所の清涼殿にも現存)などの可能性もあるのではないかと思われる。

聖徳太子と尺八

 言い伝えによれば、聖徳太子が信貴山に詣で、その後に四天王寺へ向かう途中に、馬上で笛あるいは尺八を吹いていると亀の瀬というところ(現在の大阪府柏原市近辺)で山ノ神(金色の老猿・信貴山の守護神)が現れ、その音に合わせて舞を舞ったという。その後景を後に雅楽の曲にしたものを蘇莫者(ソマクシャ)という。
 余談だが、「蘇莫者(ソマクシャ)」とは、読んで字の如く、「亡くなった者が蘇る=復活」を意味している。聖徳太子にはイエス・キリストに似たエピソードが多い(厩戸皇子の出生)が、これも奇妙な一致である。

参考URL=正倉院所蔵の尺八
参考URL=法隆寺に奉納された尺八(現 東京国立博物館 蔵)

古代尺八を吹奏したといわれる人物

慈覚大師 円仁(じかくだいし、えんにん)=天台宗の僧で最澄の弟子。唐に渡って修行した僧侶8人のうちの一人。平安時代前期(794年~864年)。唐から伝えたという引声阿弥陀経(いんぜいあみだきょう)の音声が不足していた為、尺八でその音を補いつつ吹伝した。その時、尺八では「成就如是功徳荘厳」というところで音が足りなかったが、虚空から「也(ヤ)の音を加えよ」とお告げがあり、唱える時には也を加えたといわれている。その影響からか「明暗両打の偈」でも唱える時は「也」が加えられる。

貞保親王(さだやすしんのう)=清和天皇の子で南院式部卿宮、桂親王、南宮親王などとも号される。平安時代前期~中期(870年~924年)。管弦楽に長け、管弦長者や天下の名手などとも云われ、雅楽曲として絶えてしまった王昭君(おうしょうくん)という曲を尺八の譜面から復活させたという。

覚阿上人(かくあ)=天台宗の僧であるが、禅に新たな仏教を見出し志した平安時代後期~鎌倉初期(1143年~没年不詳)の僧侶。日本における禅宗の草分け的存在。高倉天皇が禅の要旨を問うために宮中に呼び出した際には、下手に難解な講釈よりも尺八の音に禅の要諦が入っているとして吹いて聞かせたという。ただし、高倉帝には理解されず、その後、法系を継ぐものが生まれず禅宗の開祖になることはなかった。ただし、中国に伝わる五燈(5つの正式な燈史文献)には、日本人で唯一名前が記載されているという。

源義経&静御前=平治の乱で破れた源義朝の九男、幼名を牛若丸。平安時代末期の源氏の武将(1159~1189年))。平家打倒の功労者でありながら、兄・源頼朝の許可を得ずに朝廷から官位・判官を受けた事で謀反とされ、追放(義経への同情からのちに判官びいきの語源になる)。吉野山で愛妾の白拍子(しらびょうし)・静御前に形見として陶製の尺八を贈ったとされる。その後、義経は奥州で自刃。静御前も捕らわれて鎌倉に送られ、尺八は没収。頼朝と政子の前で舞いを舞うよう命じられ、有名な「しづやしづ・・・」の歌で舞を舞う(詳しくは、雪の花を参照のこと)。没収した尺八は、頼朝によって箱根権現に奉納されたという。この尺八は、前面に5つの指孔、裏面に1つの指孔の古代尺八あるいは洞簫タイプ。

後醍醐天皇
 鎌倉時代後期~南北朝時代初期の天皇で、歴史上でも稀有な人物、革新的な人物といわれる。その影響力は、現代の日本にまで及んでいるともいう。足利尊氏、新田義貞、楠正成らの働きもあって鎌倉幕府を打倒し、建武の新政を布いたが、足利尊氏はじめ多くの武士の支持を得ず、離反にあって京都を追われる。のちに吉野や賀名生などへ落ち延び、朝廷を開き、南北朝の時代へと移った。賀名生に御在所を設けていた際に、利用していた皇居(現在は堀家住居)には、後醍醐天皇から下賜されたという一節切が伝わっている。直接的に尺八を吹いたといった記録は見られないが息子の懐良親王が吉野にいるころに尺八を吹いたともいうので、何かしら関わりがあったのかもしれない。

懐良親王(かねながしんのう)=後醍醐天皇の子で筑紫宮、征西将軍の宮とも。鎌倉時代後期~南北朝時代(1329~1383年)。幼い頃に尺八を吹かれ、その音色が天性妙を得ており、それにつられて吉野川の美しい魚が飛び跳ねた、という説話が吉野拾遺や本朝世事談綺に記されている。のちに南朝として、九州一円に勢力を拡大し、明と貿易して「日本国王」の位を授かるほど後ろ盾として良好な関係だった。その為、足利義満は明との貿易(日明貿易)を行なうにあたって外交相手と認識されず、苦労したという。

楊貴妃(ようきひ)=719年~756年。古代中国、唐の時代の玄宗皇帝の寵姫で、姓を楊、名を玉環という。
 才気があって芸事にも堪能であり、玄宗の寵愛を一身に受け、そのため一族が台頭し、結果的には政治が乱れて国を滅ぼす元となった。宰相となって権力を握ったいとこの楊国忠と安禄山(楊貴妃は我が子のように可愛がった)が対立して大規模な内乱である安史の乱がおき、その責めを問われて楊貴妃も自殺に追い込まれる。この事から傾国の美女と呼ばれ、世界三大美女の一人、また中国四大美女(楊貴妃・西施・王昭君・貂蝉)の一人ともされている。
 その後の芸術にも多くの影響を与え、玄宗の前で舞ったといわれる霓裳羽衣(げいしょううい)の曲の逸話や生涯を歌った白居易の長恨歌などから2次創作、3次創作されたものも多く残る。オリジナルの霓裳羽衣の曲は残念ながら、国が滅亡したことからのちの国家に不吉とされ、途絶えてしまった。
 この楊貴妃も尺八を吹いたといわれており、古文書にも記述が見られる(日本に伝来する時期と重なっているので、おそらく古代尺八タイプであったと思われる。

源氏物語の尺八、枕草子の横笛

 紫式部の源氏物語には尺八の記述が見られるが、同時代の枕草子にはその存在は出てこない。これは、この時代には尺八がすでに廃れており、源氏物語は物語の神秘性あるいは前時代を現す為に用いたのか、それとも清少納言は尺八に興味がなくて書かなかったのか。篳篥や大篳篥に比べて尺八の音はそれほど大きくないので想像であったのかもしれない。

【源氏物語 末摘花】
物の音ども、常よりも耳かしがましくて、方々いどみつつ、例の御遊びならず、大篳篥(おおひちりき)、尺八の笛などの、大声を吹き上げつつ、太鼓をさへ、高欄のもとにまろばし寄せて、手づからうち鳴らし、遊びおはさうず…。

訳文:さまざまの楽器の音がふだんよりもよりやかましく、それぞれ技を競い合っては、いつもの合奏とは違って、大篳篥や尺八などが大きな音を吹きたて、太鼓までも欄干の下まで転がし寄せて、公達自身で打ち鳴らして合奏していらっしゃる…。

【枕草子 二〇二段】
 笛は、横笛がいみじうをかし。遠うより聞ゆるが、近うなりもて行くも、いとをかし。近かりつる声、はるかに聞えて、いとほのかなるも、いとをかし。車にても、かち(徒歩)にても、馬にても、見えず、さばかりをかしき物はなし。まして聞き知りたる調子など、いみじうめでたし。暁がたに、忘れて枕のもとにありけるを見つけたるも、なほをかし。人のもとより取りにおこせたるを、おし包むてやるも、ただ文のようにて見えたり。
 笙の笛は、月の明かきに、車などにて聞えたる、いみじうをかし。所せくて、あつかひにくくぞ見ゆる。吹く顔や、いかにぞ。それは横笛も、吹きなしありかし。
 篳篥は、いとむつかしう、秋の虫を言はば、くつわ虫などにて、うたてけ近く聞かまほしからず。ましてわろう吹きたるは、いとにくきに、臨時の祭の日、いまだ御前には出で果てで、物のうしろにて、横笛をいみじう吹き立てたる、あなおもしろと聞きまどふほどに、なからばかりより、うちつけて吹きのぼせたるほどこそ、ただいみじううるはしき髪持たらむ人も、みな立ちあがりぬべき心地ぞする。
 やうやう琴、笛合はせて歩み出でたる、いみじうをかし。

雅楽曲

 雅楽曲は唐楽(とうがく、別名に左方。現中国の唐、現インドの天竺、現ベトナムの林邑からの伝来曲)と高麗楽(こまがく、別名に右方。高句麗・百済・新羅の朝鮮半島および渤海国からの伝来曲)に大別されるが、古代尺八が吹かれたのは唐楽のみである。日本へは先に高麗楽、のちに唐楽の順に伝来した。
 唐楽は現存一〇三曲あまりとされ、二五五余曲が失われたという。調子は、壱越調(D)、黄鐘調(A)、盤渉調(B)、双調(G)、平調(E、律旋法)と太食調(たいしきちょう。E、呂旋法)の6種。
 曲は、正式にはそれぞれの調の音取(ねとり)、調子、当曲(とうきょく。例:越天楽などの曲のこと)、止手(とめで、決まった終止パターン)と演奏されて1曲となる。さらにある調の曲を別の調に移曲したものを渡物(わたしもの)と呼ぶが、それは西洋音楽的にただ調を移したものではなく、旋律も変化する(例:平調越天楽→黄鐘調越殿楽・盤渉調越殿楽、など)。

壱越調:
壱越調音取、壱越調調子、春鶯囀(しゅんのうでん)、加殿(かでん)、承和楽、
蘭陵王(らんりょうおう)、胡飮酒(こんじゅ)、北庭楽、十天楽(じってんらく)、
酒胡子(しゅこし)、酒清司(しゅせいし)、武徳楽、壹団嬌 (いっときょう)、
安摩、二舞、新羅陵王(しんらりょうおう)、回盃楽(かいばいらく)、菩薩

黄鐘調:
黄鐘調音取、黄鐘調調子、喜春楽、桃李花(とうりか)、央宮楽(ようぐうらく)、
海青楽、平蛮楽、西王楽(さいおうらく)、拾翠楽(じゅすいらく)
<渡物>蘇合急(そごうのきゅう)、青海波、鳥急(とりのきゅう)、越殿楽、千秋楽

盤渉調:
盤渉調音取、盤渉調調子、蘇合香(そこうこう)、萬秋楽、宗明楽、輪台(りんだい)、
青海波、白柱(はくちゅう)、竹林楽、蘇莫者、千秋楽
<渡物>越殿楽、採桑老(さいそうろう)、剣気褌脱(けんきこだつ)

双調:
双調音取、双調調子、蘇合香(そこうこう)、春庭楽(しゅんでいらく)、
柳花苑(りゅうかえん)
<渡物>颯踏(さっとう)、入破(じゅは)、回盃楽、酒胡子(しゅこし)、武徳楽、
加殿破、加殿急、鳥破(とりのは)、鳥急、胡飮酒、北庭楽、陵王(りょうおう)、
新羅陵王急(しんらりょうおうきゅう)

平調:
平調音取、平調調子、皇ジョウ、五常楽(ごしょうらく)、萬歳楽、三台塩、
甘州(かんしゅう)、林歌、春楊柳(しゅんようりょう)老君子、陪臚(ばいろ)、
鶏德(けいとく)、慶雲楽(けいうんらく)、裹頭楽(かとうらく)、扶南、夜半楽
想夫恋(そうふれん)、勇勝(ようじょう)小郎子(しょうろうじ)、王昭君、越天楽

太食調:
太食音取、太食調子、朝小子(ちょうごし) 武昌楽、合歓塩(がっかえん)、
太平楽(道行 朝小子、破 武昌楽、急 合歓塩の3曲を合わせて1曲)、打球楽、
仙遊霞(せんゆうが)、還城楽(げんじょうらく)、拔頭(ばとう)、傾盃楽、
散手破陣楽(さんじゅはじんらく)、長慶子(ちょうげいし)、蘇芳菲(そぼうひ)
輪鼓褌脱(りんここだつ)、庶人三台(そにんさんだい)

その他の楽曲

一閑流 琴古流 根笹派錦風流 讃佛歌/御詠歌 忍流 西園流 天吹 一節切 三節切 明暗真法流 明暗対山 九州系 宗悦流 松調流 古代尺八・雅楽尺八 その他

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