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楽曲解説 -その他-

 邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。

ページ内 目次:
 ・その他、伝の途絶えた尺八曲
 ・尺八伝来記より
 ・兎園小説より
 ・忍流の尺八
 ・南部藩の尺八
 ・旧京都明暗寺系(明暗真法流)の尺八
 ・琴古流の尺八

その他、伝の途絶えた尺八曲

 書物などに曲名が残っているが、虚無僧からの伝えが途絶えてしまった尺八曲や不明な曲名を紹介する。今後、何か資料や譜面が出てくることを願うが絶望的だろう。

尺八伝来記より

 享保17年に書かれた扶桑散人覚心の古書に以下の曲名が記載されている。なお、この書物には、一月寺・鈴法寺連盟の古文書の写しも添えられている。

以下、34曲
伝来:
霧海ヂ 虚空 虚霊 巣籠 薄暮盤渉夕暮、ウスグレバンシキ)
霊法流 善也恋慕

途絶:
律虚霊 鈴虚空 雲響虚空(虚霊、ウンキョウ) 窪訓虚霊(ワクン・エキン)
声広虚霊(聲廣、セイコウ) 葭岡虚霊(カコウ) 遏雲虚霊(アツウン)
虹啜虚霊(コウセツ、コウテツ) 翰敬虚霊(カンケイ、ガンキョウ)
落梅虚霊(ラクバイ) 緩端虚霊(カンタン) 遶梁虚霊(ジョウリョウ)
意律恋慕 武田恋慕 風情恋慕 鳴渡恋慕 和霧恋慕
吟静恋慕 縅朧恋慕(イロウ) 調音恋慕 諍達恋慕(静達、ショウタツ)
了祖恋慕 志道恋慕 情緩恋慕(ジョウカン) 得秀恋慕 遊戯恋慕
總譜恋慕(ソウフ、スフ)

兎園小説より

 南総里見八犬伝で有名な滝沢馬琴が、山崎北峯ら友人を語らって発意した随筆集で、文政8年より月に1回お互いに奇事異聞を書記して発表するというもの。その中で、文宝堂(亀屋久右衛門、薬種商い。2代目蜀山人。)という人が、「虚無僧定法」という題で本則や文書、曲名などが少し書かれている。しかし、聞きかじり程度だった為か、それともそういった曲があったのか、フリガナが付けられているが曲名の当て字が大いに異なる。以下に列記する。

十八曲:
無磚ヂ(ムカイヂ、霧海ヂか?) 虚空 静攬(スガガキ、菅垣)
瀑布音(タキオトシ、瀧落か?) 休愁(キュウシュウ) 厭足(アキタ、秋田か?)
座草(オグサ、葦草?) 善哉 賤子(シズ、志図) 意子(イス、伊豆)
雲井 興(キョウ、京鈴慕か?) 夕暮 波間 獅子吼(シシクルイ、栄獅子)
盤渉 虚霊(コク?、キョレイの間違い?) 巣鶴(スゴモリ、鶴巣籠)

倫絶(リンゼツ、林雪) 櫓骨(ウチアヘ、打替か?)
鈴薈挑(レイボナガシ、鈴慕流か?)

※以下、記事より
凡二十一曲、是を表組といふとぞ。
この外に、なお裏組もあるよしなれど、未だ赦しなければ知らざるよし、右十八曲の中にコクウといへる名二つあり。はじめにあるは、普化禅師相伝の曲にて、あとは後人の作りし曲なりといへり。   文政8年正月朔 文宝堂しるす

※兎園小説以外の文献資料からも同様の漢字の曲名が出てくるので強ち間違いでもない模様。

※「琴古手帖」の末にも琴古流の本曲を同じような字体であてたものがあり、この兎園小説でも「裏組もある…」といっているので琴古流本曲のことをいっているのだと思う。あるいは、尺八吹合所や一月寺鈴法寺ではこのような字を当てていたのだろうか。琴古手帖では全ての曲に「○○鈴慕」と鈴慕が付随している。

忍流の尺八

 鑁字という曲のみ、甲州の乙黒明暗寺に伝わったとされ、伝来している。が、この曲は高橋空山作ともいわれており、真偽不明。忍流があったのかどうかも解らない。

南部藩の尺八

 残念ながら、伝承はほぼ絶望的。ここで書く南部藩(現在の岩手県北上市から青森県下北半島)が、南部藩全体を指すのか分立支配した盛岡藩、八戸藩、七戸藩を指すのかは不明。
 「南部藩にも竹好きの藩主がいたらしく、本曲が流行したといわれる。維新前、小山武助という人が藩主より指南され、その門人に桜田要助(藩出入りの表具師、※)という人がおり、本曲二十九曲を受け継いだ。曲譜は盛岡市のどこかに保存されている。桜田要助の愛管が金満家(そういう姓名なのか、それとも単に金持ち・地主という意味か)の蔵に死蔵されていると云う。後年の門人、村田虎三は未だ健在である…。」と、錦風流の乳井師の前掲文に記載されている。
 神保政之助は、岩手出身の桜田要助という虚無僧から鶴之巣籠(蓮芳軒喜染軒伝)を教わり、それを参考に奥州鈴慕・神保三谷・神保巣籠などを作ったといわれている。もしかしたら同じ人物だったのかもしれない。

 伝来する南部藩お抱えの職人名簿の中には、表具師(経師、※)桜田要助の名称は記載されていない。出入りだけだったのか、それとも別の藩だったのか、または別名だったか。あるいは表具師ではなく香具師(※)の間違いか。古く尺八や一節切は、大道芸的な一座の一員として活動している絵も残っているので、桜田要助もこの手の生業をしていた人物なのかもしれない。
 また藩主が、尺八を好んだという史料もないのは残念である。ただし、花巻に松巌軒が作られたこともまた事実なので、強ちデマとも思えない。継続調査が必要。
 南部藩と根笹派錦風流が興った弘前藩は、藩の境界が接しているということもあり、あまり仲は好くなかったという。

※表具師(経師)=掛け軸の表具を直す職人のこと
※香具師=こうぐし、やし、てきや。祭日や縁日などで出店や大道芸などの見世物を行う露天商の一種。飴細工・薬師などの物売りや獅子舞・猿回しなどの見世物も広く香具師にまとめられる。

 南部藩水沢出身の虚無僧・島田大次郎が、越後で修得した信濃川の船唄を江差追分の本唄の前付けとして吹奏したところ評判を呼んだことから江差追分の伴奏として一般的に尺八が吹かれるようになった。このことから、南部藩でも尺八が吹かれていた事が伺える。

旧京都明暗寺系(明暗真法流)の尺八

●伝承が途絶えた、または曲名の異なるもの。譜附秘書に記載されている。
蘭 若菜 伊勢流秋田(青木友右 吹之) 音調理(調子とは異なる)

●伝承が途絶えた、または曲名の異なるもの。虚無僧宗禁記集に記載されている。
【譜尺八】
藪間(やぶすま) 産種(さんしゅ) 手裏(しゅり) ?(橿?)栄(かえい)
笠中(かさなか) 隠空(いんくう) 聲發(じょうはつ)
合(含?)情(ごうじょう) 綿々(めんめん)) ?語(おうご)
?々(かんかん) 鳳鳴(ほうめい) 或並(あるいはなみ、わくへい)
琴瑟(きんしつ) 以争(いそう) 雅名(みやびな) 
※ここまでは、「譜尺八」と題されているので、あるいは尺八の名称なのかもしれない
【傳受秘曲】
向寺 境獅 虚空 伊豆 恋暮 夕暮 志傾(志図?) 金紗 虚霊
鳳来 清涼 流泉

一月寺・鈴法寺伝あるいは琴古流の尺八

 戦前の名人の音源と現在の琴古流本曲を聴き比べると音の長さや細かな手などかなり異なる印象を受ける。また、古譜と現在の楽譜を見比べるとメリカリや運指なども異なるところもあり、実際の音では半音程度の違いもあって、曲調の印象も異なる。

●伝承が途絶えたもの。
黄鐘ノ調(曙調) 双調々(雲井調) 雲中祥鶴(雲峯郡鶴) 平調々 平調楽
平調虚空 盤渉楽 盤渉菅垣 清風調 清風音調 麒率舞

その他の楽曲

一閑流 琴古流 根笹派錦風流 讃佛歌/御詠歌 忍流 西園流 天吹 一節切 三節切 明暗真法流 明暗対山 九州系 宗悦流 松調流 古代尺八・雅楽尺八 その他

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