楽曲解説 -ラ・ワ・ン行-
邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。
鈴慕(レイボ)
尺八古典本曲。主に奥州系の本曲。琴古(キンコ)流、明暗真法(ミョウアンシンポウ)流、明暗対山(ミョウアンタイザン)、錦風(キンプウ)流、西園(セイエン)流の本曲。
普化宗では各寺軒に固有の鈴慕を所伝し、地名や寺名を冠して伝え、これを一寺一律といったという。九州鈴慕・京鈴慕など多数の種類がある。また、巣鶴鈴慕(ソウカクレイボ)のように単に曲名に用い、一寺一律の鈴慕とは関係のないものもある。
ほかに別字として霊慕(レイボ・リョウボ)・鈴法(レイホウ)・恋慕(レンボ)、臨門(リンモン)などとも。この曲名の違いは、吹き手によって異なるとのこと(例:住職→鈴法、虚無僧→鈴慕、俗人→恋慕)。海童道の本曲「霊法(レイホウ)」は、薩慈(サシ)に分類される。
伝説では、吉原の遊郭で虚無僧がこの曲を吹いたところ心中が続出し、それ以来、遊郭での吹奏を禁じた、といわれている。
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鈴慕の名を冠するものとしては、下記のものがある。
琴古流:
九州鈴慕、京鈴慕、霧海ヂ鈴慕(ムカイヂレイボ)、虚空鈴慕、吉野鈴慕、
葦草鈴慕(イグサレイボ)、伊豆鈴慕、鈴慕流し、巣鶴鈴慕、
波間鈴慕(ナミマレイボ)、秋田菅垣(風袋軒伝鈴慕)
※波間・霧海ヂ・虚空の各鈴慕は長崎松寿軒伝
※九州鈴慕は博多一朝軒伝
※伊豆鈴慕は伊豆瀧源寺伝
明暗真法流:
手解鈴法(テホドキレイホウ)、 紫鈴法曲(ムラサキレイホウノキョク)、
鈴慕之曲(レイボノキョク)別名に伊予恋慕・歌恋慕とも、
北国鈴慕(ホッコクレイボ)別名に突飛喜、吉野恋慕(ヨシヤレンボ)、
恋慕流(レンボナガシ)、五段恋慕流(ゴダンレンボナガシ)、
芳谷鈴法(ヨシヤレイホウ)、真蹟鈴法(シンセキレイホウ)、
四段恋慕流(ヨダンレンボナガシ)、倭鈴慕(ヤマトレイボ、宮城鈴慕)
※手解・真蹟・紫野鈴法は京都明暗寺伝
※北国鈴慕は越後明暗寺あるいは国泰寺伝とも
明暗対山:
九州鈴慕、筑紫鈴慕(チクシレイボ)、恋慕流※、
陸奥鈴慕(ムツレイボ)、秋田(風袋軒伝鈴慕)
※恋慕流は、西園流の鈴慕からの移名
錦風流:
流鈴慕(ナガシレイボ)、宮城鈴慕、芒野鈴慕(ススキノレイボ)
西園流:鈴慕
奥州系:
布袋軒鈴慕(フタイケンレイボ)、松巌軒鈴慕(ショウガンケンレイボ)、
宮城〈野〉鈴慕[ミヤギ〈ノ〉レイボ]
越後鈴慕(下田鈴慕[シタダレイボ])
九州系:九州鈴慕、筑紫鈴慕
興国寺:
紀州鈴慕、義経鈴慕(追分)、飛鳥鈴慕、慧日恋慕(エニチレンボ)
※興国寺に伝承ではなく、法燈国師奉賛会に伝わるもの
普済寺:覚睡鈴法(カクスイレイホウ)※空山作?
一寺一律の本曲と関係なく新たに新古典本曲として作曲された場合、普化禅師の鈴(鐸)の音を慕うの意味から○○鈴慕とつけられる場合も多い。
上記の他、元々は同じ伝の曲(例:布袋軒鈴慕)であるものが伝承した人によって微妙に異なる(これを「手が変わる」という)ことから、伝承した人の系統を明確にする為、個人名または流派名を頭にとって「○○伝の鈴慕(例:如道伝の鈴慕)」といった言い方をする場合もある。
以下、同名曲ではあるが伝承系統別の鈴慕名。
布袋軒鈴慕:(別名。伝承系譜)
・小梨錦水伝の鈴慕(宮城野鈴慕、奥州鈴慕。長谷川東学or黒沢照雲→錦水)
・後藤桃水伝の鈴慕(小梨錦水→桃水)
・浦本浙潮伝の鈴慕(小梨錦水→浙潮→谷北無竹)
・明暗対山の陸奥鈴慕(浦本浙潮→樋口対山が編曲後改名)
・神如道伝の布袋軒鈴慕(奥州鈴慕。小梨錦水→如道)
・岡本竹外伝の布袋軒鈴慕(小梨錦水→大門如玄→竹外)
・錦風流別伝の鈴慕(宮城鈴慕。小野寺源吉→錦風流)
・折登如月伝の鈴慕(金成寺伝鈴慕。小野寺源吉→如月)
・神如道伝の松巌軒鈴慕(宮城野鈴慕。折登如月→如道)
・及川霍友、岡崎明道伝の鈴慕(宮城鈴慕。長谷川東学→霍友→明道)
・高橋空山伝の鈴慕(臥龍軒伝鈴慕)
・坂田東海、佐野東界伝の鈴慕(倭鈴慕)
・奥田北童、鶴田南童伝の鈴慕(奥州鈴慕)
・海童道道曲 霊慕(北の臨暮、奥州臨暮)
越後鈴慕:
・神如道伝の越後鈴慕(掘田侍川→斉川梅翁→如道)
・岡本竹外伝の越後鈴慕(掘田侍川→斉川梅翁→竹外)
・小山峯嘯伝の下田鈴慕(越後鈴慕。掘田侍川→斉川梅翁→峯嘯→竹内史光)
(西園流)鈴慕:(恋慕、普大寺伝鈴慕。浜松普大寺→兼友盛延→西園流)
・明暗対山 恋慕流(兼友盛延→樋口対山→明暗対山)
その他のラ・ワ・ン行の楽曲
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