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尺八コラム 限界突破!

荒野、そして道 2020/1/8

 尺八を始めて最初の最初、ローローツーツー、音を出して、指を動かす。誰もがそこから始まる。1孔を開けては閉じて、2孔を開けては閉じて、時には2本や3本の指を同時に、また時には素早く遅く。そして、アゴを引いたり出したり、メリカリメリカリ。こういった基本的な動作を覚えて、そして曲に移っていく。
 基本的な事ができるようになれば、後は応用でどんなことでもできるようになる。 しかし、この基本的な動作をしっかりと身に付けることはとても難しい。何故なら単純でつまらなく、また成果が出ている感に乏しいから。

 例えば、目の前に草がぼうぼうと生い茂った荒野を想像してほしい。ススキだったり、セイタカアワダチソウだったり、雑多な草が腰の長けまで延びて、あなたが進むことを邪魔している。しかし、あなたはその生い茂る草の向こうに、荒野の果てに、尺八を巧みに演奏している自分がいることを直感している。
 そうして、尺八を手に取り、一歩を踏み出した瞬間に、荒地には確かな踏み跡が刻まれる。最初はか細く、その踏み跡はすぐに雑草に飲みこまれそうになる。そこを何度も何度も往復して、しっかりと踏み固める作業。それが練習という行為なのではないかと私は思う。そして、踏み跡を消そうとする雑草は、あなたの怠け心の分身である。

 才能のあるなしは、その踏み跡をつける力の量なのではないかと思う。人それぞれ足の大きさや体格があるように。才能がある人は、踏み跡を力強く、あるいは大きな幅でつけることができるのかもしれない。踏み跡がしっかりと刻まれれば、より遠くまですいすい進むことができる。
 才能がない人でも諦める必要は全くない。荒野に分け入る勇気を持てば、そこには必ず踏み跡が生まれる。最初はか細く、すぐに消えてしまいそうでも。何度も何度も往復して踏み固めれば立派な道ができる。早く進むか遅く進むかの違いである。
 どうせ尺八が上達し、技が極まる人跡未踏の中心地に近づけば近づくほど、そこには目に見えない壁のような重力や押し戻そうとする嵐のようなものが存在し、先に進む速度を遅く、鈍くする。だから、先に進む人にだって追いつける。まぁ、そもそも先を競う必要もないのだけれども。

 この荒野に踏み跡を刻む作業。おのれ一人ではどのように進んでいいか悩むことだろう。右に進むか、左に進むか、北か南か東か西か。そもそも?方角はどちらがどちらだ……。同じところを……ぐるぐるぐるぐる……回っているだけかもしれない。
 そんな時、進行方向を示してくれる存在が、先を行く師匠である。手を振って「こっちだよ」と導いてくれるかもしれないし、あるいは地図を渡してくれるかもしれない。そうやって、進むべき道を示してもらえれば、より自信を持って突き進むことができる。踏み跡をつける力も強くなる。
 ただし、あくまで師は道を示すのみである。あなたの代わりに踏み跡を作ってくれるわけではない。あなたはあなたの荒野に道をつけなければならない。

 こうやって荒野が踏み固められ、次第に大きな道となる。偉大な先人がつけた道を多くの人が通って街道になる。その流れが「流」である。そして「派」とはその流の作った街道を進みながらも時には、「こちらの方角の方がいいのでは?」と新しい道を作ったり、横道を探したりして派生するものである。
 だから、あなたもこの街道を進めばいい。それが一番手っ取り早い。もしも、街道から見える景色が、あなたの思ったものでないならば、横道にそれたり、別の街道まで新しい道を作ったりしたっていい。何ならすべての道を飲み込む気概で広げたっていい。何故ならこの道は、あなただけの道なのだから。


時に壁にぶち当った時は休んだっていい。
しかし、あなたは自らが進んできた道を見失ってはいけない。
そして、これから進むべき道を見誤ってはいけない。

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