尺八コラム 限界突破!
何故、名演奏家には左利きが多いのか? 2011/3/12
何故、名演奏家・達人・一流と呼ばれる方には左利きが多いのだろうか?私の知るところでは、海童道祖師や山口五郎師、湯浅富士山師、製管師の中村銀越師も左利きだ。共通する点は現時点で65歳以上と年齢が高い世代だということだが、これは一つのヒントになりはしないだろうか。
今からおよそ100年前、宮城道雄や中尾都山、吉田晴風らが新日本音楽として盛んに活動し、邦楽界を大いににぎわせていた時分がある。自由な感性と旧いものを残しつつも西洋音楽の新しい要素を取り入れ、発展していく時代。日本国全体が西洋に追いつけ追い越せのまさに変革の時代である。厳格な規律と形骸化しつつあった古い組織の考えは、この時期すこし緩み、あるいは変わっていったのかもしれない。ちょうどこの頃が彼らの師匠の世代だろう。そのような自由な感性と新しい要素を取り入れつつあった世代は、演奏の形といったものにこだわらず、より良い演奏・音楽表現を追及し、弟子育成に力をいれていたのではないだろうか。山口五郎師、青木鈴慕師、横山勝也師、山本邦山師をはじめ、この年代の方々に著名な尺八家が多いのは、この推察を裏付ける。
しかし、このあと昭和中・後期に入り、新日本音楽の影響や先駆者達の活躍もあって一気に尺八人口が増えるのだが、ココで一つの弊害が起こった。これまで、少ない弟子を大切に育て、音楽性向上に努めていたのだが、急に人数が増えてしまったが為に育成が追いつかない。どうしても各流派で基準となる規則、あるいは形式が必要になった。ここから、下管は右手・上管は左手といったように規則の遵守が唱えられ、音楽の発展を鈍くさせたのではないだろうか。
今、海外への進出や若い世代によってにわかに邦楽界が新しい道を歩みだしている。むやみに旧いものを壊せとは言わないが、自由な感性で音楽の幅を広げる、そういった懐の広さが必要になってきているのではないだろうか。形や格式ばかりにとらわれず、良いものは良い、悪いものは悪いと言える、そんな大人で私はありたい。
補足:ここでいう左利きは、尺八を左手で下管、右手で上管を構えることである
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