尺八コラム 限界突破!
もっと、他の流派のことを知ろう!! 2011/4/13
・・・結論から言おう。
尺八家は、もっと他の流派・音楽にも興味を持つべきだ。製管師の私がこんなことを言うと流派のえらい方に抗議されそうだが・・・・・・今後の尺八界の為にあえて言う。それぞれの流派の長所短所をもっと深く知り、出来ないことに満足せずに新たなものを受け入れる向上心を持ち続けて欲しい。
以下、私なりの各流派の長所短所だ。
・都山流
<ロツレチハヒ>
西洋音楽を取り入れることを主眼に置いたため、音程・拍節が割としっかりしている。譜面も他の流派に比べて至ってシンプルで観やすい。五線譜・現代曲にも対応しやすく、楽譜も多数出版されていて便利。代わりに本曲には音色が明る過ぎて向かない。演奏の時は、ユリ(ヴィブラート)を常用し、フリはない。音色は固めが好まれる。
・琴古流
<ロツレチリヒ>
本曲と三曲合奏に主眼を置いている。また、様々な替え指があるため音色の自由さはきわめて高い。ただし、逆にそれが細かすぎたりもする。譜面は甲乙で指の表記を替えているものもあるため慣れると便利だが、慣れていないとちんぷんかんぷんになる。本曲・三曲ともに尺八を代表するものが多く、とても楽しめる。譜面は合奏には不向き。演奏の時は、ユリ・フリをはじめ様々な技巧が駆使される。音色は、都山よりは幾分柔らかめだが、竹保ほどではないものを好む。
・竹保流
<フホウエヤイ>
関西ローカルを中心に人気がある。前身は明暗真法流と近藤宗悦の宗悦流。本曲を主眼においている。「フホウエヤイ」は近藤宗悦が尺八道場で使用していたものを引き継いでいる。他の流派から見ると意味不明な譜面になるがなれると平気。明暗系の流れである為、音色はシンプル。音の良否を追求するので音程はちょっと低い。本曲に向いている代わりに五線譜・現代曲は鬼門。演奏の時は、ユリは入れず、フリはある。音色は柔らかい音が好まれる。
と、ざっくばらんに書いてみた。それぞれ、長短色々だろう。なので、琴古流・竹保流の方には、ぜひ都山譜も勉強してほしい。拍節も解りやすいし、何より譜面が多数出版されているので合奏に便利だから。いちいち譜面を直さずに済む。逆に、都山流の方には琴古の細かい替え手や竹保の音色の追求の勉強をして、もっと本曲に味を出せるようになってもらいたい。
お互いの流派のことがわかれば、もっと楽しい。多くの人と交流すれば、さらにあなたの尺八の世界が発展・進化していくだろう。虚無僧時代のように、他流派はスパイとして殺されるということもないのだから、もっと尺八を堪能しよう。情報社会の現代、「自分の流派こそが至高のものだ」というのもそろそろなしにしようじゃないか。
補足:かなりやりたい放題書いているが、温かい気持ちで読んでくれるとありがたい。
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