尺八コラム 限界突破!
尺八が割れる理由 2011/5/3
尺八演奏家・愛好家にとっての一番の恐怖は、お気に入りの尺八が割れることではないだろうか?知らないことは恐ろしい、そもそも尺八のちゃんとした保管の仕方など教わったことがない。実に私のところに来る修理依頼の8割は割れ止めであることも、多くの人が苦心し、失敗していることを物語っているといえるだろう。私自身も、製管を始める前までは尺八の保管に関しては感の域を出ず、常に割れるのではないか、という恐怖と戦っていた。だが、今は違う。「何故、割れるのか?」を知れば、ちゃんとした対処法が見えてくる。
保管方法については、別項「尺八の保管方法」にオススメの保管法を紹介している。
まずは、そもそも尺八が割れる理由はなんだろうか?
- ① 竹の乾燥に伴う伸縮による割れ
- ② 矯めた竹が元に戻ろうとする力による割れ
- ③ 漆地などの収縮による割れ
尺八を落としたり、傷つけたりするのをなしにして、おおよそ上記の3つが考えられる。それぞれ説明しよう。
① 竹の乾燥にともなう伸縮による割れ
竹は、植物である。採集し、加工し、細工を施してもその性は残っている。昼夜の寒暖差・季節の湿潤、そういったもので竹の繊維が伸びたり、縮んだりを常に繰り返しているのだ。しかし、あまりにも乾燥し一定の限界を超えると一気に自己破綻が起こる。それは、何百kg、何tともいう力が一箇所にかかる。これに対処する為には、しっかりと保湿を行い保管する必要がある。対処法として、別項「尺八の保管方法」を参考にしてもらいたい。
② 矯めた竹が元に戻ろうとする力による割れ
竹を製管し、尺八にする為には形を整える為に矯める必要がある。しかし矯めるということは、もともとの竹の成長を無理に矯正するということだ。自然そこには無理な力がかかってしまう。その行き場の無い力が、行き場を求めて割れになってしまうのだ。対処としては、製管後1年以上(梅雨時を越えている)ならば、この心配はない。
③ 漆地などの伸縮による割れ
地塗り尺八の場合、竹の内部に漆地を塗る。それが水分と結合することで収縮し、硬化するのだが、その時かなりの力が竹本体にかかり、小さなキズやヒビがあった場合には割れとなってしまう。対処としては、製管後3ヶ月以上経過していれば、コレによる割れの心配はない。
②や③は基本的に製管中なので、この割れは製管師の責任だ。多くの方が陥るのは①番だろう。しっかりと対処してほしい。
しかし、様々な対処を行い、厳重に尺八を保管してしまっても割れてしまう場合もある。そんな時は焦らずにすぐに割れ止め修理を依頼しよう。すぐに修理をすれば傷も浅く済む。困ったことに割れは放置すればするほどに傷は広がって、費用もかかってしまうから・・・。
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