尺八コラム 限界突破!
竹を喰らう虫 ~その条件~ 2011/10/16
尺八の修理の中には、時として虫食いで無残になったものがある。前回、その虫食いはどういった虫によって被害が起こるのかを説明した。今回は、その虫食いにあう条件について書きたい。その原因は、竹材採集に短を発する。
二月から九月の竹採るな(諺)
尺八作りの始まりは、竹林に分け入り採竹することから始まる。普通の人の感覚だと、竹に種類があったり、材質の良し悪し、尺八製作にあっているかどうかの区別があるなんて事は、思いもよらないかも知れないが、実は尺八の出来不出来はこの竹材採集の時点で7割は決まっているといってもいいだろう。それほど大切な作業だ。だから、うっそうと茂る竹林の中で良材を発見した時の喜びは、小躍りしたくなるほどだ。
そのように大切な竹材採集であるが、その方法(仕入れ)には2通りある。それは、製管師自身が竹林に入って採竹する場合と竹材業者から買い入れる場合だ。普通、竹材の採集は上記コトワザの通り、早くとも10月から遅くとも2月ぐらいまでを目処にするように行うと昔から云われている(12月~1月末が最良)。これは単なる古代妄想ではなく、ちゃんとした経験則からの言葉で、「それ以外のシーズンに採った竹には虫がつきやすいですよ」と教えてくれているのだ。詳しく理由を説明すると、竹は多年草で越冬する為に水分や栄養(特に糖分)を内部に蓄える。それが2~9月の間で、それらの栄養分を狙って虫が寄ってくるのだ。ただ、普通は竹の表皮が堅牢過ぎて虫も寄り付けない、そこで傷のついているものや切断されたものが狙われるのだ。だから、尺八製作者はその時期以外には竹は取らないべきであるし、現にそうしている。
しかし、竹材業者や素人についてはそうもいかない。前者の場合は、彼らにも生活がある。採竹のシーズンが10~2月の数ヶ月では、仕事としては成り立たない。そこで、シーズン外にも竹を採り、油抜きも済まして納品する。後者は、まさか竹を掘る時期があろうとは夢にも思わないだろう。そういったものが時に出回り、結果として尺八として作られてしまう場合がある。
とはいえ、完成品を買う場合にはどの時期に採竹されたものかほぼ解らない。知っているのは製管師だけだ。だから、購入を検討する場合には、採竹時期についても聴いてみるのもいいかもしれない(困難ではあろうが・・・)。良心的でちゃんとした材料を使っている人なら自分が掘ってきたきたかどうか、いつ頃の竹か、どの辺り産かまで教えてくれるだろう。尺八は、決して安いものではない、虫害の被害を避けたければ、ちょっと聴くぐらいの勇気を出しても損にはならないだろう。
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