練習法・吹き方
幻海お知らせブログの方で過去に紹介した、尺八のさまざまな吹き方や練習法を少しまとめていきたいと思います。初心者にもできるだけ解りやすく、経験者にとっては目から鱗な上達法。ほんのちょっとの練習の仕方だけで、どんどん尺八が上手くなります。
良い響きを得るための特練
尺八が少し自由に吹ける様になってくると「あの人はあんなに音が良く響いているのに、なぜ自分の音はそんなに響いている感じがしないのだろう?」と欲や不満が出て来ることはないでしょうか。
これは尺八を吹いている誰もがブチ当たる壁…残念ながら一朝一夕で解決できるような問題ではありません。もしかしたら一生の問題、というか上手い人は常に「より良い音を…」と試行錯誤しています。
とはいえ、それで「がんばって練習してください。」ではあまりにも突き放しすぎな気もしますので、私なりにこの問題を乗り越えた方法を紹介したいと思います。
【用意するもの】
1尺8寸管(常用にしているもの)
2尺1寸以上の長管(できれば地無しが望ましいが地塗りでも可)
この2本の尺八で何をするかというと単純な話、交互に吹奏します。ただ、少しだけポイントがあります。それは”長管から先に吹く”ということです。
尺八には、楽器の構造上、音が鳴るポイントというものが数ヶ所あります。①歌口で息を切る場所、②歌口から約7cmほどの範囲、③1孔下の節周辺、の3ヶ所です。
①は、か細い音になるか、もしくは息が多すぎてかすれた音になります。意識的に利用する場合はムラ息なんかで使用しますね。②は、音量は大きく聞えますが、残響がなくて少しあらぽっく聞えます。現代的な吹奏ではもっぱら良く使われますが、どこか尺八というよりはフルートのような音がします。③は、演奏している本人には、音の発生源が遠いので音が小さく聞えますが、そのぶん残響が多くて遠音が利きます。つまり、③の音が尺八にとって一番理想的であり、できればそれを身につけられれば、万々歳だということです。
しかし、なかなか歌口から遠い距離で鳴らすというのは、イメージもしづらいですし、難しいものです。そこで、私が過去の練習法でも散々とりあげている裏技”カラダに疑似体験させてしまう”という方法…そのための”長管から先に吹く”です。
1尺8寸に比べて長管は、同じように吹いているつもりでも、長い分、自然と鳴らすポイントが下に下っています。また長管の乙ロなどは「息を管尻まで届かせないといけない」という意識が無意識に働いています。この無意識を利用します。
まず初めは、長管を1時間なり真剣に吹いて、その楽器に体を慣らします。その後、最後に1尺8寸に持ち替え吹奏します。その時、”1尺8寸に持ち替えた”という意識は持たず、”長管をそのまま吹いている”という意識で吹きます(まぁ、1時間も長管吹いていれば勝手にそうなると思いますが…)。※慣れないうちは同じ日に持ち替えるよりも、今日は長管、明日は8寸というように曜日で替えるほうがいいかもしれません。
慣れないうちは、時間配分を長管9割、8寸1割ぐらいで行ない。徐々にその割合の差を少なくしていきます。このように練習すれば③1孔下の節周辺で鳴らすということが、どういったことなのか解ってくるかと思います。
またこの練習法にはもう一つ利点があります。上記では「8寸を長管のように吹く」といっていますが、逆もまたしかりで「長管を8寸のように吹く」ということも同じように大切です。長管は指孔の間隔が広く、どうしても運指が大雑把になってしまったり、細かい動きに対応できず、雑になったりしますが、この8寸の感覚で吹くことで指使いがスムーズになります。
この練習を行なえば、音の響きを得られ、また運指も練習できるので、まさに一石二鳥ですね。よければ試してみてください。
こちらの記事をはじめ、尺八の練習方法や管理の仕方などについて、詳しくは「まるごと尺八の本(葛山幻海 著)/¥1600」に記載しています。よかったらそちらも参考になさってください。
稽古・出張稽古・講習会など
直接、尺八を習いたい話しを聴きたいといった方もおられるかと思います。近郊の方であればお稽古に来ていただければと思いますし、遠方の方であれば出張稽古や講習会などを行なうことも可能です。興味があればご覧ください。[稽古・出張稽古・講習会など]