楽曲解説 -ヤ行-
邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。
夕暮之曲(ユウグレノキョク)
黄昏(タソガレ)
琴古流の本曲、表十八曲「真手(シンノテ)」の一曲、表組の曲ではあるが曙調子の曲。別に錦風流の別伝曲、黄昏。
一月寺の役僧、半林子より伝来したと琴古手帳に記されている。正徳享保(1711~1735)頃に霊元法皇が御苑での御遊びの時に、尺八の名手・鈴木了仙という虚無僧がこの曲を吹いたとの逸話が随筆「翁草(神沢杜口
著)」に残っている。
逸話によれば、霊元法皇が秋の暮れかたに御苑の高殿でお遊びになっていると何処ともなく籟(らい)の音が風にのって聞こえてくる。その音は畏れるが如く、慕うが如くただならぬと院がその行方を求めさせると、一人の虚無僧が街を通りすがっていく。御所へ招いて、「今の一手は如何なる曲か」と尋ねると、「今の曲は何かという曲ではなくただ秋の夕暮れの物悲しさに感じ入って吹いた曲である」と申し上げれば、その曲を夕暮と名づけよと勅名を賜った、と記されている。昔は別に薄暮などとも呼ばれていた。
また、吉田一調の甲信旅行を記した「道の記」によれば、一調が信州の地主宅へ泊まった折に、その家の主人・松本三右衛門が一調に一曲所望し、その時吹いたのが夕暮であったという。その主人はいたく感銘して、尺八教授を求め、仕方なく20日ほど留まって瀧落ノ曲を伝授したという。
明治37年に写筆された錦風流の尺八譜の中に「黄昏」という曲名の譜がある。曲の旋律は琴古流(一閑流)の夕暮之曲と同じであるが、琴古流の甲ウが部分的に錦風流ではチ(おそらくメリではない)となっているなど少し吹き方が異なり、そういったところから感じは異なっているかもしれない。現在は残念ながら伝承は途絶えている。
参考音源:琴古流 夕暮之曲(提供:木村氏 使用管:8寸四郎管)
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