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楽曲解説 -カ行-

 邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。

五郎時致(ゴロウトキムネ)

 地歌筝曲、長唄物。作曲は十代目杵屋六左衛門(キネヤロクザエモン)。作詞は、三升屋二三治(ミマスヤニソウジ)。
 題材は、鎌倉時代の有名なあだ討ち話「曽我兄弟のあだ討ち」から。これは、日本三大あだ討ちの一つとされ、赤穂浪士の討ち入り・鍵屋の辻(かぎやのつじ)の決闘(別名:伊賀越の仇討ち)と並び称えられている。
 この曽我兄弟のあだ討ちは、歌舞伎・国性爺竹抜五郎(コクセンヤタケヌキゴロウ)を初め様々な芸能に影響を与えた人気の物語の一つ。

[本調子]
さるほどに 曽我の五郎時致は
倶不戴天(ぐふたいてん、※1)の父の仇(あだ)
討たんずものとたゆみなき 弥猛心(やだけごころ、※2)も春雨に
濡れて廓(くるわ)の化粧坂 名うてと聞きし少将の
雨の降る夜も雪の日も 通ひ通ひて大磯や
廓(さと)の諸分(しょわけ、※3)の ほだされやすく
誰に一筆(ひとふで)雁のつて
野暮な口説(くぜつ)を 返す書(がき)
粋な手管についのせられて 浮気な酒に宵の月
晴れてよかろか 晴れぬがよいか
とかく霞むが春のくせ
いでオオそれよ 我もまた
いつか晴らさん父の仇 十八年の天津風(あまつかぜ、※4)
いま吹き返す念力に 逃(のが)さじやらじと勇猛血気(ゆうもうけっき)
そのありさまは牡丹花(ぼたんが)に つばさ閃く胡蝶のごとく
勇ましくもまた 健気なり
[二上り]
藪の鴬(うぐいす) 気ままに鳴ひて うらやましさの庭の梅
あれそよそよと春風が 浮名立たせに 吹き送る
堤のすみれ 虎杖(さいたづま、※5。※さぎ草は)
露の情けに濡れた同士(どし)
色と恋との実比べ(じつくらべ)
じつ浮いた仲のちょう よしやよし
剛勇無双のいさをしは 現人神(あらひとがみ)と末の世も
恐れ崇(あが)めて今年また 花のお江戸の浅草に
開帳(ついちょう)あるぞと賑わしき

※1 倶不戴天=不倶戴天。ともにこの世には生きられない、生かしておけないという深い恨みや怒り。

※2 弥猛心=いよいよ勇み立つ心。たけだけしくはやる心。

※3 諸分=細かい事情。男女間の機微に関すること。遊里の種々の慣例や作法。

※4 天津風=時津風と同義。時合の事。順風。

※5 虎杖=イタドリ。山野に生える植物。さいたづまは古名。地方名としては、スカンポ・イタンポ・ドングイなど。山菜として食べることも出来る。

曽我兄弟のあだ討ち:
所領争いで父親を工藤 祐経(くどう すけつね)に殺された兄の曾我祐成(すけなり)と弟・時致の兄弟が、源頼朝が行なった富士の裾野の巻狩りで敵を討った事件。その後、騒ぎを聞きつけた10数名の武士を切り伏せた後に兄は落命。弟は、捕らえられる。頼朝は事情を解し、助命を考えたが工藤方に要望され斬首した。後に「曽我物語」と軍記物として編纂され、能狂言・浄瑠璃・歌舞伎などの題材に取り上げられ、人気を博す。

10代目 杵屋六左衛門=幼名・吉之丞。1800年~1858年。
9代目杵屋六左衛門の次男として生まれる。長唄の中興の祖といわれ、多くの名曲を残している。代表曲に、鶴亀、五郎時致、末広狩など。

三升屋二三治=本名、青地宗三郎。1784~1856年。
江戸後期の歌舞伎狂言作者。本業は、江戸蔵前の札差(金融業)であったが、のちに廃嫡される。

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