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楽曲解説 -ア行-

 邦楽の様々な楽曲の由来や解説などを知り、より演奏を楽しむ為の考察です。

阿字観(アジカン)

 明暗系の古典本曲、博多一朝軒伝の本曲。薩慈(サシ)の一種。阿字観は宮川如山(ミヤガワニョザン)による編曲とされている。他に明暗対山の「阿字曲(アジノキョク)」があるが曲想はことなる。名称、阿字観の由来は正確には不明。その由来を尋ねても如山曰く、「樋口(対山)のは、阿字。わしのは阿字観たい」と、生涯口外しなかった(富森虚山・谷狂竹 談)とのこと。谷北無竹曰く、樋口対山・宮川如山両名の申し合わせによって、薩慈から似た語呂の阿字に変えたという。のちに(戦前26年ごろ福岡で)谷北無竹の勧めで宮川如山のものに「観」の一字を足し、阿字観と名乗るようになったという。
 阿字観のどこまでも自己の鍛錬による救済(剛、動、自力本願)に対して、如意は目に見えないものや他力による救済(柔、静、他力本願)を現している。

 宮川如山(柳川江月院の系統、のち樋口対山に師事、熊本出身)の音は、豪放磊落・一気呵成が持ち味で、この阿字観も歯切れのよい奥州系のユリ奏法(布袋軒の長谷川東学から教授された)と流れるような吹奏が特徴的であったが、弟子の谷狂竹(タニキョウチク)がのちに長管(源雲界からぶんどった2尺5寸1分の愛管)でゆったりとした奏法に変更した。これが原因で如山は狂竹を破門している。如山曰く、「狂竹崩しの阿字観になってしまったタイ」とのこと。もっとも、狂竹は平気な顔で破門後も出入りしていたらしいが・・・。現在は、もっぱら狂竹のゆったりとした阿字観が主流のよう。
 親友である津野田露月(ツノダロゲツ)や神如道(ジンニョドウ)等も度々、「直々に阿字観を教えてほしい」と懇願するが、「すでに他から習い、自分流に吹いており、他所で如山からこう習ったといわれては困る」と頑なにこれを拒み、神如道にいたっては諦めきれずしばらく家の角に立って如山が練習するのを盗み聞いた、との逸話もある。
 阿字観の中に出てくる特徴的な首振りとユリの旋律型をあわせて、通称「十三冠り(ジュウサンカムリ)」と呼ばれる。これは、托鉢の際の鈴の音を現しているという。この音型は、九州にもともとあったものというよりも、如山が奥州系の長谷川東学(ハセガワトウガク)から学び得たものである。このユリは、盥一杯の水をこぼさないように揺れる様や笊でもみ殻を飛ばすなどの動きを真似ているともいい、体得することは非常に難しい。

 阿字とは、もともと梵字で大日如来の種子字を意味し「阿字で始まり阿字で終わる」と言われ、宇宙万有=虚空を含むと説かれる。ほかに軍荼利明王、火天、火神、日光菩薩、日天、阿修羅などが、この阿字を種子字とし、総通字として全ての諸尊を示す場合もある。
 阿字観とは、弘法大師空海が伝えた真言密教の精神集中法の一種で、梵字に向かってひたすら集中・瞑想するものである。その瞑想法として阿息観(アソクカン)・月輪観(ガチリンカン)・阿字観がある。座禅に共通するところがある。


参考音源:一朝軒伝 阿字観(地無し古管 律8寸管を使用)

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